2025年05月21日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「トランプ2.0」(9) 宮田智之・帝京大学教授

会見メモ

現代アメリカ政治学を専門で、『アメリカ政治とシンクタンク』などの著書がある帝京大学教授の宮田智之さんが「トランプ政権とシンクタンクの変容―保守派の動向を中心に―」をテーマに登壇。米国においてシンクタンクがどのように発達してきたのか、第1次トランプ政権と第2次トランプ政権との違いや今後の展望などについて詳説した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)


会見リポート

米シンクタンクの変貌

鎌田 秀男 (読売新聞東京本社経済部次長)

 日本でシンクタンクといえば、中立的な立場の調査・提言機関を思い浮かべる。だが会見で宮田氏は、米国のシンクタンクが、極めて政治的な思惑をもって活動する機関に変貌しつつあることを、歴史的経緯も踏まえて明かした。

 米国で1970年代に出現した保守系シンクタンクは、2016年の大統領選挙では当初、大半が「反トランプ」を掲げた。だがトランプ政権誕生が近づくにつれ、支持を表明する団体が相次ぐようになる。

 ある保守系シンクタンク幹部は「我々は8年も下野したが、ついに政権へのアクセスを手に入れる機会を得た。この機会を逃してはならぬ」と発言したという。主義主張を曲げてでも、権力の懐に入るチャンスをつかもうとする執念を感じさせる。

 20年の選挙でトランプ氏が敗北すると、退任した高官らは伝統的なシンクタンクではなく、「MAGA派」と呼ばれる団体を次々と創設し、24年の選挙に向けて政策提言を活発に重ねた。トランプ氏が大統領の座に返り咲くと、関係者の多くは政権中枢に迎えられた。

 米メディアによると、MAGA派シンクタンクが23年に発表した政策提言の4割が、第2次トランプ政権ですでに実施された。MAGA派が示す政策は、トランプ氏のメガネにかなうことを意識し、「かなり極端」(宮田氏)なものが多く、内外への影響も大きい。

 宮田氏は、今後、保守系主流派シンクタンクの「整理」が進む可能性があると指摘した。共和党政権に接近できなければ、資金や成長を得る見込みが低くなるためで、むしろMAGA色を強める団体が現れる恐れもある。

 トランプ氏が生み出す政治的磁場は、自由な研究や政策提案を本業とするはずのシンクタンクに大きな影響を与えた。彼らの言説がどう変化していくのか、今後も注視したい。


ゲスト / Guest

  • 宮田智之 / Tomoyuki MIYATA

    帝京大学教授 / Professor, Teikyo University

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:9

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