2025年05月15日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「トランプ2.0」(8) 石黒憲彦・日本貿易振興機構(JETRO)理事長

会見メモ

日本貿易振興機構(JETRO)の石黒憲彦理事長が、「揺らぐ国際秩序 日本企業が直面する課題と対応」をテーマに登壇。「トランプ関税」が日本に与える影響と課題をミクロ、マクロの視点から整理するとともに、JETROに寄せられた企業の声も踏まえ、日本と日本企業は米国にどう向き合うべきなのかについて話した。

 

司会 今井純子 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

米の孤立主義、トランプ後も続く可能性も

城間 将太 (日本テレビ放送網報道局経済部)

 トランプ政権による自動車への追加関税が発動してから1カ月あまりが経過した。国内の大手自動車メーカーにも大きな影響が出ていて、業界の雄であるトヨタ自動車は4月と5月だけでも1800億円の損失が出る見通しを示し、他のメーカーも今年度は“トランプ政権”の関税政策などの影響によるマイナス影響を予想している。

 JETRO=日本貿易振興機構の石黒憲彦理事長は、来年の中間選挙への影響なども踏まえると、トランプ政権が相互関税を停止している90日間で「現実性を見せるのではないか」と前向きな予想をする一方で、関税政策のような孤立主義的な政策はトランプ政権が終わった後も続く可能性があると指摘している。「ただ4年間しのげばいいという話ではない」、もはやかつてのようにアメリカは自由貿易の盟主国ではないという認識で付き合っていかないといけないと強調した。

 石黒理事長は、おととしから堅調だった企業の賃上げもトランプ政権の影響で腰折れになり、日本経済の好循環の兆しにも暗雲が立ちこめていると懸念を示した。“トランプ関税”の影響で国際経済も不透明性が増す中、日本国内における人口減少も大きな問題だと強調、人口が減ることでGDPにも影響し、日本経済を復活させるには、海外の活力を取り込み、海外で稼がなくてはいけないとした。

 「日本が世界にとって付加価値を誇れる産業をどれだけ作っていけるか」

 石黒理事長は、アメリカや世界各国との今後の向き合い方として、諸外国にとって「不可欠」な製品を作るなど、産業基盤を強化して備えるべきだと訴えた。具体的には半導体の製造装置や半導体部品など、日本の技術力を生かした産業で世界シェアを獲得していく必要があると同時に世界シェアを獲得する製品を作る中小企業をいかに増やせることが課題だとも指摘した。

 日本の産業は力強さを取り戻し、厳しさを増す世界市場で戦っていけるのか。“トランプ関税”は日本全体でこうした課題と向き合うチャンスにもなるのではないかと考えさせられる会見であった。


ゲスト / Guest

  • 石黒憲彦 / Norihiko ISHIGURO

    日本貿易振興機構(JETRO)理事長

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:8

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