会見リポート
2025年05月28日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「韓国大統領選を読む」(2) 木宮正史・東京大学大学院前教授・特任研究員
会見メモ
東京大学韓国学研究センター特任研究員の木宮正史さんが、「韓国政治の構造と現在」を題し登壇。今回の大統領選の発端である、尹錫悦大統領が昨年12月に非常戒厳を宣言するに至った過程や、選挙戦の状況、新政権が直面する課題などについて話した。
司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)
会見リポート
進歩系政権、日米韓連携が軸
申 紀 (時事通信社外信部)
韓国の尹錫悦前大統領による「非常戒厳」宣言に端を発した大統領選は、進歩系政党「共に民主党」の李在明氏が支持率でリードしている。木宮正史氏は進歩系政権が発足した場合の外交について、現在の国際情勢を踏まえると日米との関係強化を進めるだろうと指摘。日韓関係では元徴用工訴訟などを巡り、尹錫悦政権で示された解決の枠組みを覆すことはないとの見方を示した。
木宮氏は、韓国の政権の政策には保守、進歩といった理念よりも、国を取り巻く状況が強く影響していると説明。米韓FTAの締結や韓国軍のイラク派兵を決断した進歩系の盧武鉉政権や、政権前半に中国に本格的な接近を図り、慰安婦問題で日本に強硬姿勢を取った保守系の朴槿恵政権が主な例という。
進歩系の文在寅政権は米中間で曖昧な立場を取り、北朝鮮に対してはある程度譲歩してでも南北の枠組みに組み込もうとする姿勢を見せていた。しかし、尹政権はこうした政策を大きく転換。木宮氏は、これもまた政治的性向だけで説明できるものではなく、国際環境に対応する側面が強かったと解説した。
木宮氏は、米中対立が先鋭、構造化する現状では、文外交は「もはや通用しない」と指摘。さらに韓国で若年層を中心に中国への厳しい見方が強まっており、進歩系政権が発足しても「文外交への回帰は考えにくい」と述べた。「安保や価値観を同じくする米韓同盟、日米などとの関係強化を基軸とし、形の上で文外交も調和させるのではないか」と分析した。
過去には日本に過激な発言を行った李氏だが、選挙戦では日韓関係の重要性を強調し、現実路線を唱えている。木宮氏は、日本政府も韓国政府に対して日韓関係の重要性を強調するとともに、「歴史問題などで現状変更するような姿勢を見せないこと」が重要だと語った。
ゲスト / Guest
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木宮正史 / Tadashi KIMIYA
東京大学大学院前教授・特任研究員
研究テーマ:韓国大統領選を読む
研究会回数:2