2025年05月13日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える」(4) 三輪泰史・日本総合研究所 創発戦略センター  チーフスペシャリスト

会見メモ

農業再生による地域活性化や先進農業技術の事業化・導入支援などが専門で、農業政策にも詳しい三輪泰史・日本総合研究所 創発戦略センター  チーフスペシャリストが会見した。

現在のコメの価格高騰対策の全体像や、今後のコメ政策を検討していく際に必要な視点、ICTなどの先端技術を農業分野で活用していく上での課題などについて話した。

 

司会  西山公隆 (朝日新聞社)


会見リポート

「極めて的確だった処方箋」

早田 栄介 (共同通信社経済部)

 会見から10日足らずでコメ価格に対応する政府の方針が大きく動き、三輪氏が示した処方箋に対する受け止め方も変わった。

 短期的な価格対策として備蓄米放出を効果的に行うための三つのポイントを挙げた。①ターゲット価格の明示、②7月までペースを落とさずに放出、③入札ルールの変更(参加業者の拡大と買い戻し条件の緩和)である。説明を聞いた当初は、失礼ながら「一部は制度の枠組みを超えており実現のハードルは高い」と感じた。

 5月16日、農林水産省は備蓄米の運用改善策を公表した。毎月10万㌧の放出継続、買い戻し条件の5年以内への延長などを含み、②と③の一部が導入されたと評価できる。

 だが、そこから事態は急展開した。江藤拓農相が失言で21日に辞任。石破茂首相が党首討論で「3千円台を実現する」と明言。農相に就いた小泉進次郎氏は、スーパー・飲食店にも備蓄米を売り渡し、需要があれば無制限に放出すると述べた。最終的に①~③すべてが盛り込まれたと言える。放出の実効性を高めるにはどうしたらいいのかを追求した三輪氏の分析は、極めて的確だった。

 その他の説明も非常に明快だ。適正なコメ価格は5㌔当たり3000~3200円で、現状よりも1000円程度安い水準を示した。生産コストの上昇やパンや麺類の物価上昇率とのバランスを考慮して修正したという。価格高騰のメカニズムについては、猛暑による流通の目減りやインバウンド需要の増加といった一時的要因に加え、「芸術的とも言える生産調整」により需給のバッファーが縮小しているという構造的問題を強調した。

 最後に、価格高騰が続けば、消費者の「国産米離れ」を招き、生産力を弱らせると警鐘を鳴らした。生産者と消費者が納得できる価格に早く落ち着かせ、多収米の作付面積拡大やスマート農業の普及により生産基盤強化を進めることが重要だと指摘した。


ゲスト / Guest

  • 三輪泰史 / Yasufumi MIWA

    日本総合研究所 創発戦略センター チーフスペシャリスト / The Japan Reserch Institute/emergent strategy center

研究テーマ:「『コメ』はいつまで主食か―価格急騰を考える」

研究会回数:4

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