2025年05月22日 11:00 〜 12:30 10階ホール
ツァヒャー・エルベグドルジ・元モンゴル大統領 会見

会見メモ

大統領在任中の2017年に死刑を廃止した。今回は死刑廃止国際委員会の委員としての来日で、自国で死刑を廃止した際の経験などを話した。

 

司会 井田香奈子 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)


会見リポート

死刑廃止というレガシー

佐藤 大介 (共同通信社編集委員兼論説委員)

 2017年に死刑を廃止したモンゴルの元大統領で、当時の議論を主導したエルベグドルジ氏が来日し、国会議員らと意見交換するとともに、日本記者クラブでも会見した。

 今回は死刑廃止国際委員会の委員として来日したエルベクドルジ氏は、死刑廃止を決断したのは09年に大統領となった直後だったことを明らかにした。死刑は「国家による殺人」と明言し、誤判や虚偽の自白、政治的迫害によって科される可能性があることから、制度を維持することは「人権や命の尊重に反する」と考えたためだ。

 モンゴルでは08年まで死刑執行がなされていたが、その情報は一切が国家機密とされ、遺体が遺族に返還されることもなかった。大統領就任後、確定死刑囚を終身刑に減刑し、執行停止を宣言するとともに、廃止に向けて法改正に乗り出した。

 当初は国会議員や世論から強い批判を浴びたが、情報を公開して議論を重ねる中で、廃止への理解が広がっていったという。「死刑が賛成か反対かを二者択一で聞けば、賛成が多くなる。しかし、政治家は時に世論に逆らう必要がある。説明し、対話を重ねれば、人々は理解してくれる」。そうした姿勢が、死刑廃止の是非も焦点となった13年の大統領選での再選につながった。

 被害者や遺族の感情については「苦しみは十分に理解できる」としながらも、死刑ではなく「反省の日々を送らせること」が重要とし、死刑が犯罪を抑制する効果があるとの考えには疑問を呈した。

 世界的には死刑廃止が潮流となる中、日本は維持しているが、執行のない期間が千日を超えた。エルベクドルジ氏は、モンゴルの死刑廃止を自らの「レガシー(遺産)」と強調し、日本に対しては「より多くの情報を公開し、国民が理解を深めた上で、国会での議論を進めるべきだ」と、今後の動きに期待を示した。


ゲスト / Guest

  • ツァヒャー・エルベグドルジ / Tsakhia ELBEGDORJ

    モンゴル元大統領 / Former, President of Mongolia

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