会見リポート
2025年05月08日
16:30 〜 17:30
9階会見場
ミャンマー支援の現状: 赤十字国際委員会、日本赤十字社報告会見
会見メモ
ミャンマー中部を震源とする大地震が発生してから1カ月あまりがたった。国軍と武装勢力の内戦で政情が不安定な中で、国際機関などによる支援活動が進められている。
4月上旬に現地を訪れた赤十字国際委員会(ICRC)のレジス・サビオ・アジア大洋州地域局長、現地とのコーディネーターを務める日本赤十字社事業局国際部の藤枝大輔参事に加え、保健医療要員として現地に派遣され、4月28日から中部・ガザインで活動を続ける医師の小林謙一郎さんがリモートで参加し、現地での活動の現状と課題について話した。
写真左からサビオさん、小林さん、藤枝さん
司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長
会見リポート
人災と天災の複合危機
野沢 康二 (日本経済新聞社シニアライター)
「ミャンマーは大地震が起きる前から既に2000万人近い人が人道危機に陥っていた」。サビオ氏は会見で、今回の災害の深刻さを繰り返し強調した。
地震や気象災害は日本をはじめ多くの国でたびたび起きている。だがミャンマー大地震では、2021年にクーデターでアウンサンスーチー政権を倒した国軍と反対派勢力による内戦で多くの人が国内避難民となっている中で大地震が襲ったことがほかの地域と異なる。紛争という人災と地震という天災が重なった複合危機なのだ。
被害者の具体例として挙げられたのは、ロヒンギャの人々が隣国に越境避難するなど混乱が続くラカイン州での戦火からマンダレーに逃れた妊婦。生活の安定を求めた地で再び被害に遭い住居などすべてを失ったという。同じような苦境に直面する人が各地にあふれている。
地震を受けて国軍と複数の反対派勢力は停戦を表明したものの、戦闘は完全には収まっていない。さらに市民は直接の戦闘に巻き込まれるだけでなく、内戦で国内のあちこちに敷設された地雷の恐怖にもおびえながら生活している。23年にミャンマーで地雷や不発弾の爆発によって死傷した人は前年からほぼ倍増の1003人に上った。世界全体の2割近くを占め、国・地域別で最も多かった。
こうした状況にもかかわらず、ウクライナやガザと違い世界の関心は決して高くない。国際社会は脆弱なミャンマーの国民を見捨てずに、当面の人道援助と復旧、その後の復興へと支援を続けることが欠かせない。
ミャンマーでは軍事政権下の08年、巨大なサイクロンが襲い甚大な被害が出た。軍政が国際支援の受け入れを渋って批判を浴び、結果的にその後の民主化につながったとされる。今回も「災い転じて福となす」ことができるのか。民主化の回復に向けた国軍の英断に期待する。
ゲスト / Guest
-
レジス・サビオ / Regis Savioz
赤十字国際委員会(ICRC)アジア大洋州地域局長 / Regional Director for Asia and the Pacific, International Committee of the Red Cross
-
藤枝大輔 / Daisuke FUJIEDA
日本赤十字社事業局国際部参事
-
小林謙一郎
日本赤十字社和歌山医療センター感染症内科部副部長