2025年05月09日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「自治体消滅にあらがう」(8) 宇野重規・東京大学社会科学研究所教授

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会見リポート

「所有から利用」へ転換を

石松 恒 (朝日新聞社ネットワーク報道本部次長)

 いまの世代の利益を代表する民主主義は、時が経つほど深刻さを増す未来の問題を解決できるのか。政治思想史を専門とする宇野氏は、とりわけ地方で厳しさを増す人口減少危機を直視しつつ、地方自治を論じたフランスの思想家トクヴィル研究から見えた民主主義の可能性を論じた。

 岩手県釜石市や島根県海士町などへのフィールドワークから「社会を良くするための多様な実験を許すのが民主主義」と語る。

 現状は、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計を大きく下回る形で人口減は進む。外国人の流入を前提とした人口の下支え効果にも疑問を呈した。人口減に伴う多死社会は長く続き、空き家は空前のレベルで増えるのは「決まっている未来」だと断じた。

 それでも「2100年に人口が6千万人を切ろうとも、日本のポテンシャルは大きく、それをいかに解き放つかがカギだ」と、今すぐ着手すべき対策の重要性を説いた。

 処方箋として強調したのが「所有から利用」への価値観の転換だ。空き家や放置山林、農地などで所有者不明土地がネックとなり再活用を阻んでいると指摘。「利用を促進する方向にかじを切るべきだ。発想を変えないと土地家屋は生かせない」

 今後職員が圧倒的に不足する自治体では、これまでのように個別の自治体がフルセットのサービスを提供する「自前主義」は通用しない。基盤となるシステムなどで共通のプラットフォームを作り、その上に地域の個性を生かす方向を示した。副業・兼業や2拠点生活など複数居住地化への制度見直しも説いた。

 地域の未来はそれぞれ違う。時には残酷な選択が迫られるとしても、自分たちで決める=民主主義の先にしか、未来は開かれないとして、こう締めくくった。「難しいが、まだまだやれることがある」

 


ゲスト / Guest

  • 宇野重規 / Shigeki UNO

    東京大学社会科学研究所教授 / professor, Tokyo University

研究テーマ:自治体消滅にあらがう

研究会回数:8

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