2011年06月03日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「イスラエル・パレスチナから見た中東激変」

会見メモ

池田明史 東洋英和女学院大学 副学長

Vice President, Prof. Akifumi Ikeda, Toyo Eiwa University

中島勇 中東調査会 主席研究員

Isamu Nakashima, Chief Research Fellow, The Middle East Research Institute of Japan


中島氏は、中東和平のこんごの展開をパレスチナ側からみた場合、以下3点に注目する必要があるとした。

①和解したハマスとファタハが選挙管理内閣をつくり、来年、大統領選挙や議会選挙を予定通り行えるかどうか。

②チュニジアやエジプトの民主化運動に影響を受け、ハマスとファタハとも距離をおいた、若者の和解後の統一政府やイスラエルに対する示威行動がどのようになっていくか。

③パレスチナ自治政府は9月の国連総会で国連加盟と国家承認を求める。これに対して国連の反応がどうなるか。


池田氏は、パレスチナとイスラエル双方にとって、昨年12月以降のアラブ民主化の流れは、「アラブの春」というなまやさしいものではなく、「アラブの津波」ともいうべきものであるとする。イスラエルの機能する唯一の民主主義といううたい文句は、周辺諸国が民主化すれば、成り立たなくなってしまう。民主化よりも安定した独裁国家の継続をイスラエルが望んでいたことがさらけ出されたかっこうになった。

9月の国連総会でパレスチナの国家承認が認められれば、イスラエルの孤立感は深まり、塹壕メンタリーともいうべき、ひきこもり状態になっていく可能性がありうる、とも。


司会 日本記者クラブ事務局 石川洋

中東調査会のホームページ

http://www.meij.or.jp/


会見リポート

中東和平 剣が峰の秋

福島 良典 (毎日新聞外信部副部長)

「アラブの春」はイスラエルとパレスチナの和平交渉にどんな影響を及ぼすのか。そんな素朴な疑問の「解」を求めて参加し、「やはり中東は面白い」との思いを強くした。


談論風発の講演を新聞の見出し風に要約すれば「四面楚歌のイスラエル、いきり立つパレスチナ」「中東和平交渉再開のめど立たず、武力衝突の恐れも」というところか。


特に興味を引かれたのはパレスチナ若年層の動向だ。今春以降、占領地内外で繰り広げられている同時デモは「活動歴のないナイーブな20代がフェイスブックなどで連絡を取り合い、行動を起こした」という。


求めるのは、ヨルダン川西岸とガザ地区に引き裂かれたパレスチナ分断状態の解消だ。若者の声を無視できず、自治政府を率いるファタハとイスラム原理主義組織ハマスは統一政府の樹立に合意した。


オバマ米大統領も動いた。1967年の第3次中東戦争でイスラエルがヨルダン川西岸などを占領する前の境界線を和平交渉の出発点とすべきだ──。米大統領として初めて「67年境界線」の受け入れを公の場でイスラエルに迫った。


焦点は9月の国連総会。パレスチナ独立国家承認の決議が採択された場合、どうなるか。「孤立を自覚したイスラエル」(中島氏=左)に対し、パレスチナから「国際的な認知に現実を合わせる動き」が出れば、第3次インティファーダ(反イスラエル抵抗闘争)につながりかねない。


「『イスラエルと一蓮托生か』と思われる立場に追い込まれたくない」(池田氏)オバマ政権はじめ国際社会は知恵を絞って、流血の事態を防ぐことができるのか。中東和平にとって剣が峰の秋になりそうだ。


ゲスト / Guest

  • 池田明史・東洋英和女学院副学長 中島勇・中東調査会主席研究員 / Vice President, Prof. Akifumi Ikeda, Toyo Eiwa University Isamu Nakashima, Chief Research Fellow, The Middle East Research Institute of Japan

研究テーマ:イスラエル・パレスチナから見た中東激変

前へ 2025年05月 次へ
27
28
29
30
1
2
3
4
5
6
7
10
11
12
17
18
24
25
31
ページのTOPへ