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会員が出版した書籍を、著者自身によるワンポイント紹介とともに掲載しています。
■パリ日記 特派員が見た現代史記録
山口 昌子(産経新聞出身)
▼欧州激動の時代を目撃
産経新聞パリ支局長(1990年5月―2011年9月)及び、その後のパリでのフリー記者の日記。発売中の1巻「ミッテランの時代」(90年5月―95年4月)は89年11月のベルリンの壁崩壊後のパリを含む欧州の激動の時代。湾岸戦争、ボスニア紛争、アフガン戦争への参戦やソ連の消滅と一連の東欧の自由選挙。さらにカンボジア和平国際会議やパリ国際会議に加えECからEUへの拡大。おまけにミッテランの末期ガンに隠し子事件と多忙を極めたが、この時代を現場から報道できたことを僥倖といわず、何といおう。
藤原書店 / 5280円 / ISBN 4865783245
■イギリス解体の危機
中島 裕介(日本経済新聞欧州総局記者)
▼小国か今のカタチ死守か
TPPの参加表明やG7サミットの議長など華々しい外交政策を展開するジョンソン英政権。だが、すでに「終わった」ものと見られがちのブレグジットにより、スコットランドや英領北アイルランドの「英国からの離脱」リスクは残ったままだ。本書では、ブレグジット後の英国が小国へと没落するのか、今の国のカタチを死守して影響力を高めるのか探った。先人・先輩の深い見解や洞察にはかなわないが、その代わり拙著では現役閣僚や有識者のインタビューをふんだんに交え、現地の生の声もお届けする。
日本経済新聞出版 / 990円 / ISBN 4532264650
■先史時代物語 世界遺産をたどって
土谷 精作(NHK出身)
▼岐路に立つ現代文明 見直す契機に
北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産に登録された。壮大な宮殿や城壁を備えていない縄文遺跡が世界遺産に値するのか。こんな疑問からスタートし、世界各地に散在する先史時代の世界遺産をたどってみた。先史時代の人類史においてみると、自然と共生し、戦争がなかった縄文時代の特性が際立っている。科学と技術で自然を支配できると考えている現代文明に「もっと謙虚に」という縄文人からのメッセージが聞こえてきた。
エコハ出版 / 2200円 / ISBN 4866935014
■歴史認識を問う
天日 隆彦(読売新聞出身)
▼中間派の立場から論点整理
戦後50年を迎えた1995年前後から、歴史認識問題は政治・外交上のイシューであり続けてきた。この間、文化部記者、論説委員として先の大戦を巡る問題に取り組んできた筆者が、論点を整理した。東京裁判、戦没者追悼、慰安婦問題など8章で構成。報道現場で活用できるよう、根拠となる資料の紹介にも重点を置いた。左右両派の間で論争をよんできたテーマだが、中間派の一見解として読んでいただきたい。
晃洋書房 / 2640円 / ISBN 4771035377
■戦後沖縄と復興の「異音」
謝花 直美(沖縄タイムス記者)
▼米占領下、自律選んだ人々
1950年代半ばの沖縄で、「島ぐるみ闘争」と呼ばれた土地闘争は、現在の平和運動の源流となった。本書はこうした運動の中で拳を上げなかった人々の生存を描いた。
占領下で進む復興は、人々に米軍への協力を求めた。「戦争未亡人」のミシン業、那覇人の軍労働、沖縄初の大学での弾圧を通し、復興を巡る人々の軋轢を描いた。声を上げられずとも、ぎりぎりの地点で自律を選ぼうとした人々を、復興の中の「異音」として描いた。
有志舎 / 2860円 / ISBN 4908672490
■金正恩が表舞台から消える日 北朝鮮 水面下の権力闘争
五味 洋治(東京新聞論説委員)
▼北朝鮮で何が起きているのか
北朝鮮は、経済制裁、食料難に加え、新型コロナウイルスの感染防止のためとして、1年半以上、国境封鎖を続けている。一時の挑発的な動きは止まっているが、国内で何が起きているのか、ますます見えにくくなっている。本書は、そんな北朝鮮の現状をできるかぎり分析している。一方、最高指導者、金正恩総書記は、2020年に一時消息不明となり死亡説まで流れた。最近は激やせが話題となっており、彼の健康問題にも迫っている。
平凡社 / 924円 / ISBN 458285978X
■北方領土交渉史
鈴木 美勝(専門誌「外交」前編集長)
▼安倍対露外交の「過誤」を分析
拙著『日本の戦略外交』の続編。安倍対露外交の虚実を描いた。まず、幾多の政治家がチャレンジしてきた北方領土問題に関して、鳩山一郎以来の冬ざれの交渉史を「外務省ロシア・スクール」の盛衰と共に振り返る。その上で、「新しいアプローチ」と称してロシアの固い施錠を開けようとした安倍対露外交をどう評価するか。2016年の長門敗戦、18年シンガポールの「空ろな約束」を俎上に乗せ、外交の〈三層構造〉と〈四つの視点〉に焦点をあて分析した。
ちくま新書 / 1034円 / ISBN 448007418X
■インド社会を変えた事件 社会と司法制度の相互関係
鳥居 千代香訳(元帝京大学教授)
▼インドの社会とは
2012年12月、首都ニューデリーで起きたニルバヤ集団レイプ事件は、悲惨な事件に衝撃を受け、抗議する男女でインド中が大騒ぎとなり、世界にも報道された。事件後、インドでは女性の安全を守るため多くの法律が制定され、改善に資金が投じられた。既決囚の死刑も昨年3月に執行された。著者ピンキー・アナンドはインド最高裁判所上級弁護士兼法務次官。お嬢さんの助け、励ましを得て本書を書いたという。前記の事件やテロや政治など異なる11の事件を通してインドを知る一冊。
柘植書房新社 / 3300円 / ISBN 4806807389
■2050年、未来秩序の選択
伴野 文夫(NHK出身)
▼米英覇権の時代から地球協同体へ
未来秩序を求める探索の最も重要なポイントは第8章。マクロン革命の背後には、レーニン主義とマルクス主義を峻別する知の巨人ジャック・アタリがいる。メルケル16年の治世でソフト化したドイツとともに、新EUは未来秩序の基盤を築く。トランプの乱世を克服しつつあるバイデンが目指すのも同じ多国間の共生だ。ピケティは新著でポスト資本主義を描く。2050年、地球協同体の未来がやってくる。日本も急がなければならない。
NHK出版 / 1760円 / ISBN 414081859X
■国境なき時代を生きる 忘じがたき記憶の物語
原野 城治(時事通信社出身)
▼歴史に名を残した先駆者たち
国境をまたいで生き抜いた先駆者たちの語り継がれる25の逸話集。エルトゥールル号遭難でトルコで最も有名になった山田寅次郎 、日台の絆「烏山頭ダム」に命を捧げた八田與一 、日露戦争を越えて愛されたロシア人・聖ニコライ、米軍人として太平洋戦争を戦った日系2世・ダニエル・イノウエなど、記憶の中に生きる越境者たちを〈再発見〉する。
花伝社 / 1980円 / ISBN 4763409662