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会員が出版した書籍を、著者自身によるワンポイント紹介とともに掲載しています。


■里地里山エネルギー 自立分散への挑戦

河野 博子(読売新聞社編集局企画委員)

▼各地の小さいエネルギー利用を、足元から追った そこで出会ったのは、地産地消、防災減災、地域活性化、地球温暖化抑止、安全の確保を念頭に、自然資源を使ったエネルギー利用に挑戦する人たち。その流れは、化石燃料の終焉へ向かう時代の太い底流とつながる。

 米トランプ政権が発足し、全ての国が気候変動対策に取り組むためのパリ協定の力がそがれるのでは、と懸念される。本書を読み、懸念を杞憂に変える流れを感じてほしい。


中公新書ラクレ / 842円 / ISBN 4121505727

■熊本地震2016の記憶(岩岡中正、高峰武著)

高峰 武(熊本日日新聞社論説主幹)

▼記録と記憶の中から復興を 2016年4月の熊本地震から間もなく1年。「地震は遭ってみないと分からない」というのが正直なところだ。本書は震度7に2回見舞われた熊本地震を5部構成で考える。

 1部「想う」で熊本在住の評論家・渡辺京二氏は「未来の人間のあらまほしき姿が、惨事の中から立ち現れた」と書く。2部の「詠む」は俳誌「阿蘇」主宰の岩岡中正氏の震災俳句、3部は夏目漱石も通った熊本市の古書店主の震災日記、4部は熊本大学が所蔵する約5万点に及ぶ細川家文書と地域史料から見る震災と復興の地域史、5部は資料編。

 記録と記憶の中から復興を目指す1冊である。


弦書房 / 1944円 / ISBN 4863291493

■科学報道の真相 ジャーナリズムとマスメディア共同体

瀬川 至朗(毎日新聞出身)

▼マスメディア報道の構造的な問題に迫る 新聞・テレビのマスメディア報道はなぜ市民の不信感を引き起こすのか? これが筆者の問題意識です。そのためにSTAP細胞事件、福島第一原発事故、地球温暖化問題という著名な報道事例を検証しました。科学報道を分析していますが、問題はむしろ「マスメディア共同体」の構造にあります。ジャーナリズムの規範とされる「客観報道」の意味を多くのメディア人が誤解してきたことや「公平・中立報道」が抱える根本的な問題点を明らかにすることにも努めました。


ちくま新書 / 950円 / ISBN 4480069275

■昭和解体 国鉄分割・民営化30年目の真実

牧 久(日本経済新聞出身)

▼昭和を終焉させた政治経済最大の事件 戦後、公共企業体として再出発した国鉄は、国家というしがらみから抜け出せず、一方、民主化政策によって生まれた強大な組合組織を抱えることになった。国鉄利権を手放そうとしない政治と経営陣の確執、経営と組合のせめぎ合い、怨念まで達した組合同士の対立。多くの複雑な要素が絡み合い国鉄解体を招いた。それは戦後政治の一翼を担った国労、総評、社会党の崩壊へとつながり、戦後の「五五年体制」は崩れ去った。

 国鉄解体に至る昭和最後の20年間を多くの証言をもとに再検証したノンフィクション


講談社 / 2700円 / ISBN 4062205246

■中嶋嶺雄著作選集 (中嶋嶺雄/『中嶋嶺雄著作選集』編集委員会編)

濱本 良一(読売新聞出身、国際教養大学教授)

鋭い中国分析で知られた中嶋嶺雄・国際教養大学初代理事長・学長(2013年2月逝去、享年76)の著作選集(全8巻)が、2年余りの作業の末、完結した。中嶋学長の教え子(筆者を含む)で、大学で教鞭を執る8人が編集委員となり、119冊という膨大な著作の中から後世に残すべき作品を厳選し、巻末の解説を手掛けた。

 中嶋氏の一生を振り返ると、現代中国の研究者、国際関係論の教育者、そして晩年の大学経営者としての3つの顔があったことに気付く。

 中嶋氏はそれぞれの分野で、寸暇を惜しんで健筆を振るい続けた。同時に生涯、バイオリン演奏を愛し、旅先で水彩画の絵筆を執る多才な人だった。28歳での処女作『現代中国論』から、秋田市にある国際教養大学の名を全国に知らしめた大学経営の手腕を披瀝した『日本人の教養』『学歴革命』などが収録されている。選集各巻の案内は出版元「桜美林大学北東アジア総合研究所」のホームページをご覧いただきたい。

 現在、中嶋氏の遺作となった論文類約5000点をPDF化し、ネット上で公開する「中嶋嶺雄デジタル・アーカイブス(仮称)」の作業も進行中だ。画像や音声、動画もアップし、21世紀型の碩学データベースを世に問いたいと思っている。

 価格は8巻セットの税込価格。詳細は桜美林大学北東アジア総合研究所まで。


桜美林大学北東アジア総合研究所 / 30000円 / ISBN 4904794613

■バブル―日本迷走の原点

永野 健二(日本経済新聞出身)

▼バブルは同じ顔をしてやってこない

 この本を書かなければと考えたのは、2013年暮れの安倍総理の発言でした。「今の株高を予測した人はマスコミにもエコノミストにも誰もいなかった」。尋常ではない、金融緩和策を打ちながら、その政策の持つリスクに対する謙虚さのないままに、ただただ株高の成果を誇る首相の発言に、いつか来た道を思い起こしたからです。

 私が記者として生きたバブルの時代の、ピカレスクロマン(悪漢小説)と思って書いた21の物語に、「(バブル論の)決定版といえる」(井上寿一学習院大学学長)「(著者は)バブルの物語を語るには適任の人物である」(池尾和人慶応義塾大学教授)といった評価をアカデミズムからもいただけたことを素直に喜んでいます。


新潮社 / 1836円 / ISBN 4103505214

■日本の戦略外交

鈴木 美勝(時事通信社解説委員)

▼安倍戦略外交の「自画像」

 機略縦横の安倍戦略外交。そこには2人のシンゾーがいた。あなたはどちらに安倍の〝晋実〟を見るか?

 安倍首脳外交の生みの親であるキーマンたちの狙い、日米印豪安保ダイヤモンド構想、日米和解劇の舞台裏、対露外交の真贋、歴史問題の深層…冷戦後の文脈の中で「地球儀俯瞰外交」「価値観外交」の淵源にまで遡り、その実相を活写し、マクロ・ミクロの目で国際政治の変動を分析する。21世紀日本外交の「自画像」でもある。


ちくま新書 / 1188円 / ISBN 4480069445

■トランプのアメリカ 漂流する大国の行方(朝日新聞アメリカ大統領選取材班)

山脇岳志(朝日新聞社アメリカ総局長)

 2016年のアメリカ大統領選は、最初から最後まで、異様な選挙でした。

 共に好感度が異様に低いドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏。異様なまでに虚偽ニュースが飛び交い、ロシアが選挙戦に介入したのも異様でした。トランプ政権になってからも、司法との対立も含め、異様な状況が続いています。この本には、そうした「異様」に密着してきたアメリカ特派員たちの実感や分析が詰まっています。

 新聞連載に新たな書き下ろしを加え、最終章では久保文明・東大教授(米国政治)の長文インタビューを収録しました。

 何がトランプ氏を大統領にまで押し上げ、今後どうなるのか。情報過多の中で、異様な状況を整理してみたい、という方に手に取っていただければ幸いです。

 


朝日新聞出版 / 1728円 / ISBN 4022514566

■コレクティヴ・ジャーナリズム~中国に見るネットメディアの新たな可能性(章蓉著)

倉沢章夫(新聞通信調査会編集長)

 中国で急成長するネットメディアの現状はどうなっているのかを詳述している。もともとは東京大学に提出された博士論文だが、それを一般向けに平易に書き直したもので、よく読めば、さほど難しくはなく大変参考になる内容だ。

 特に興味深いのは、「絶滅危惧種である華南虎が野生で生存している」と当局が発表した「華南虎事件」のいきさつだ。どういう結末になったかはお読みいただくとして、こればかりでなく、中国のさまざまな不審事件を取り上げ、ネットを通じて大勢の人々の力によって解明されていく過程を解き明かしている。

 コレクティヴというのは集合知とでもいう意味。筆者は中国人だが、その日本語能力は圧倒的で驚きだ。現在、朝日新聞社デジタル編集部記者をしている。

 (公財)新聞通信調査会の2016年度出版補助対象書籍。


新聞通信調査会 / 1944円 / ISBN 4907087047

■いま言わずして二人誌「埴輪」(宇治敏彦、小榑雅章著)

宇治 敏彦(中日新聞社相談役)

▼目覚めよマスメディア

弱体化が指摘されるマスメディアの在り方を中心テーマに、新聞ジャーナリストの筆者と雑誌ジャーナリストの小榑雅章(元「暮しの手帖」編集者)が書いた警世の書。二人は高校時代からの友人で、ブログ「埴輪」を通じて政治や世相への所見を随時発表している。安倍一強政治の影響で国民の間に「大勢順応」「今日が良ければ」の風潮が蔓延し、自由闊達な世論が失われつつあることを二人は危惧する。「表現の自由」は「健全な民主主義」と車の両輪でなければならない。

 


三恵社 / 1620円 / ISBN 4864876193
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