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会員が出版した書籍を、著者自身によるワンポイント紹介とともに掲載しています。


■中東 世界の中心の歴史 395年から現代まで

ジャンピエール・フィリユ著

鶴原 徹也(読売新聞社編集委員)訳

▼故きを温ね、新しきを知る 

 フランスの中東研究の泰斗による通史で、教鞭を執るエリート校・パリ政治学院の講義録が土台。ハンチントン流「文明の衝突」史観を排し、例えば十字軍時代に「キリスト教とイスラム教の正面衝突は全く起きなかった」と断じる。独立後の米国が最初に戦争を仕掛けた相手はリビアだという指摘は意味深い。先の「アラブの春」を19世紀以降のアラブ近代化運動の文脈で捉えるなど「目から鱗」の指南は、揺れ動く現代中東の理解に必須だ。


中央公論新社 / 5720円 / ISBN 4120058417

■「忖度」なきジャーナリズムを考える 「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」記念講座2024

瀬川 至朗(毎日新聞出身)編著

▼「時代におもねらない」調査報道 

 2017年の新語・流行語大賞に選ばれた「忖度」は、権力になびく政界官界の構造を象徴する言葉として注目を集めた。しかし、統一教会問題や性加害事件における「報道の空白」が示すように、メディア内部にも「忖度」がはびこる現実がある。統一教会の政界浸食、PFAS汚染、精神医療の闇の実態、陸上自衛隊性加害事件――。本書に登場するのは、そうした風潮に抗するかのように、徹底的かつ継続的な調査報道に取り組んだ挑戦の数々である。拙稿「『忖度』をめぐる私論」も掲載。

 


早稲田大学出版部 / 1980円 / ISBN 4657240161

■「ガラパゴス・日本」の歪んだ円相場

藤井 彰夫(日本経済新聞社論説主幹)

▼日本人と為替相場の謎を探る 

 なぜ日本はこうも為替相場に翻弄され続けるのか。40年の記者生活で考え続けてきたことです。かつては超円高、今は超円安で国中が大騒ぎになり、新聞の一面ニュースにもなります。歴代首相の多くも為替相場に気を配り続けました。日本にいるとあまり気づきませんが、海外に行くと日本の為替相場への反応のユニークさに気づかされます。それは「ガラパゴス現象」のようにみえます。日本人と円相場について、歴史を振り返りながら考えてみました。

 


日経BP 日本経済新聞出版 / 1100円 / ISBN 4296121332

■「転回」する地方自治 2024年地方自治法改正(下)【警鐘の記録】

坪井 ゆづる(朝日新聞元論説委員)

▼自治法が自治法を自己否定 

 昨年の地方自治法改正により、国に自治体への「指示権」が与えられた。そこに潜む危うさ、問題点を深く、わかりやすく解説している。分権改革で「対等・協力」になった国と自治体の関係を、再び「上下・主従」に戻し、国会議員には白紙委任を迫る。そんな改正法の内実を、研究者や政治家らへのインタビューを中心にまとめた。永田町の政局と同様に、地べたの政治・自治の世界でも時代を映す事態が起きていることを、お忘れなく。

 


公人の友社 / 2090円 / ISBN 4875559186

■記者と官僚 特ダネの極意、情報操作の流儀

西村 陽一(朝日新聞出身、東京大学大学院客員教授)

▼33年の攻防の「答え合わせ」 

 「モスクワには七つのマフィアがある」。冬のモスクワで話しかけてきた三等書記官と、その後30年以上の付き合いになるとは思ってもみませんでした。取材対象、情報をめぐるライバル、議論の相手。そんな関係を踏まえ、数々の事件の内幕を振り返りつつ、「国益の罠」「集団思考の罠」「両論併記と両論併記糾弾の罠」などメディアが陥りがちな五つの罠、「独立」「検証」など記者と官僚の七つの鉄則について佐藤優氏と徹底討論しました。

 


中央公論新社 / 1980円 / ISBN 4120058395

■日本財団は、いったい何をしているのか 第九巻 平和の希求

鳥海 美朗(産経新聞出身)

▼ウクライナ、ミャンマーに焦点 

 日本財団の事績を追跡するシリーズ本の第九巻は、ロシアによるウクライナ侵攻によって生じた多数の避難民支援と、軍事クーデターによって国情が一変したミャンマーの救済に腐心する活動に焦点を当てた。ウクライナで真っ先に繰り広げたのが、障害者を救出し安全な場所に移すプロジェクト。政治的には中立の立場に立ち、人道支援に徹する日本財団の姿勢を象徴する事例だ。


工作舎 / 2200円 / ISBN 4875025718

■ゾルゲ事件80年目の真実

名越 健郎(時事通信出身)

▼公開資料基にスパイ活動分析 

 旧ソ連の大物スパイ、リヒャルト・ゾルゲについては、日本では情報が出尽くしたが、ロシアでは今世紀になって情報公開が進んだ。ゾルゲが送った電報や書簡類が公開され、全容判明を受けて、ゾルゲのスパイ活動を再構成してみた。独ソ開戦や日本の南進に関する通報に加え、プーチン体制下で英雄として神格化されていること、上海での知られざる諜報活動、機関摘発後の混乱を取り上げた。若い記者にはゾルゲ事件をぜひ知ってもらいたい。

 


文藝春秋 / 1210円 / ISBN 4166614770

■比翼の象徴 明仁・美智子伝 全3巻

井上 亮(日本経済新聞出身)

▼平成の天皇・皇后の軌跡 

 私は「象徴天皇」を分割して解釈している。「天皇」は血統で決定しているが、「象徴」であるかどうかは自明ではない。人々がそう思わなければ象徴たり得ない。まさに国民の総意で成り立っている。

 明仁天皇はそれを強く意識し、長年の考察と経験をもとに美智子皇后と両輪の「象徴のかたち」を創始した。天皇は政治的、経済的な活動はできない。なし得るのは「精神的な支援」である。「両陛下訪問後、見える風景が変わった」という被災地の言葉が心に残る。

 


岩波書店 / 3960円 / ISBN 4000245570

■異端 記者たちはなぜそれを書いたのか

河原 仁志(共同通信出身・新聞通信調査会事務局長)

▼〝業界常識〟越えた報道の内幕 

 SNS上の発信とは異なる新聞ならではの仕事とは何なのか。珠玉の記事とはどのように編み出されるのか。本書は世の中をうならせた地方紙・在京紙の七つの報道の内幕を取材し、新聞の本質とは何かを探ったドキュメントです。自社特ダネの再検証、オフレコ破り、客観報道からの脱却……。そこに共通していたのは、皮肉なことに新聞界が守ってきた〝常識〟や〝秩序〟を乗り越えようとするアニマルスピリッツ、つまり「正統」から外れた「異端」の思考でした。

 


旬報社 / 1870円 / ISBN 4845119498

■冷戦終結からウクライナ戦争へ  ドイツ統一、ソ連崩壊の原点から考える

岡田 実(北海道新聞出身)

▼つながる平和と戦争

 35年前、米ソ首脳による冷戦終結宣言は、人々に「平和な時代が来る」との希望を抱かせた。しかし現在、ウクライナ戦争、ガザ紛争に見られるように世界は混迷の時代に入ってしまった。なぜなのか? ドイツ統一、ユーゴ紛争、ソ連崩壊など冷戦終結に派生して起きた歴史的事件が、ウクライナ戦争を引き起こしたと言っても過言ではない。当時の激変を現場で取材した筆者が、欧州現代史を振り返り、「平和」が「戦争」に取って代わっていった経過を解き明かす。


文芸社 / 1650円 / ISBN 4286221016
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