2024年11月14日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「生成AI」(4) 佐藤健・情報・システム研究機構人工知能法学研究支援センター長

会見メモ

司法分野で人工知能(AI)を使う試みが国内外で進んでいる。

人工知能研究と法学を融合させた「人工知能法学」の第一人者である情報・システム研究機構人工知能法学研究支援センター長の佐藤健さんが登壇。人工知能法学の基本から、法学に生成AIを応用する取り組みの現状や課題、自身が開発した判決推論システム「プロレグ(PROLEG)」について話した。

佐藤さんは、エンジニアであるとともに法学者としての顔を持つ。ヨーロッパではITと法律をともに学べる大学があると紹介した上で、「両方の知識を持つ人がいないのは将来を考えると問題。日本でも育成の場が必要」との考えも示した。

 

司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

「法律とAI」二刀流育成を

上田 敬 (日本経済新聞社 総合解説センター 担当部長)

 人工知能(AI)の波は、今や法の領域にも押し寄せている。筆者は長年、スタートアップ企業を取材しているが、契約書作成やリーガルチェックなど、AIを活用したサービスを手掛けるスタートアップ企業が最近相次いで生まれている。生成AIの登場は、この流れをさらに加速させているかのようだ。しかし、高度な専門性を要する法的判断の最前線である裁判実務において、AIはどこまで踏み込めるのか。「人工知能法学」の先駆者である情報・システム研究機構人工知能法学研究支援センター長の佐藤健氏はその限界を鋭く指摘し、可能性に言及した。

 佐藤氏が危惧するのは、生成AIの「ハルシネーション(幻覚)」だ。膨大なデータから学習したパターンに基づき、確率的に最適な単語を選択する生成AIは、論理的推論を欠く。そのため、「勝手な法解釈はでき、もっともらしいが間違いも多く、精査しないと使えない」と佐藤氏は指摘する。

 一方で佐藤氏は自ら開発を牽引する判決推論システム「PROLEG(プロレグ)」を紹介する。過去の判例や法理論を学習し、新たな事案の判断を支援するこの革新的なツールはAIと法の融合の可能性を示す。

 コンピュータサイエンス研究者としての顔と、法学研究者としての顔を持つ佐藤氏。AIの理論的研究を長年行った後、その応用を求めて法科大学院に入学して法学を学ぶとともに、50代で司法試験に挑戦し、見事合格を果たした。

 デジタル社会の法的課題に立ち向かうためには、IT技術と法律の両方に精通した人材育成が急務であろう。実際、欧州では、両分野を統合的に学べる大学が存在するという。「日本の大学でも専門的な教育プログラムを提供する必要がある」。佐藤氏の提言は、デジタル社会の法的基盤を築く重要な指針だ。


ゲスト / Guest

  • 佐藤健 / Ken SATOH

    情報・システム研究機構人工知能法学研究支援センター長

研究テーマ:生成AI

研究会回数:4

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