2025年07月15日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える」(7) 荒川隆・一般財団法人食品産業センター理事長

会見メモ

※YouTubeでのアーカイブ配信は行いません。ご了承ください。


会見リポート

農村支える視点を強調

鈴木 哲也 (日本経済新聞社 編集委員兼論説委員)

 元農林水産省の官房長で、長く日本の農政に携わった荒川さん。役人を引退してから7年になるが、農業と農村を守ろうという一貫した情熱が伝わってくる会見だった。

 会見の冒頭、役人の本分は政治家の考えを「客観・中立・公正」な立場で実務に落とし込むことだとしながら、「実際の役人は人間なので、いろんな人間がいる」と述べた。自身は「宮城県の田舎の出身で、食料・農業・農村が大事という思いから農林省を志した」という。

 そんな荒川さんは「農地の上で営まれ、地域とともにある農業は、競争原理だけでは律し得ないのではないか」という問題意識をもつ。

 生産者が持続的に農業を営むための米価と、消費者が安心して購入できる米価の差をいかに埋めていくのか。今回の「米騒動」で、浮かび上がった本質的なテーマである。

 コストを下げるため大規模で効率的な生産者をつくる「産業政策」はこれまでも試みられてきた。だが荒川さんは、一部に強い農家が育ったとしても、それだけでは、中山間地の耕作放棄や集落の崩壊が連鎖的に進む過程は止められないとし、「地域政策なき産業政策では、『一将功成りて万骨枯る』」と強調した。

 会見後に投開票があった参院選では、与野党ともにコメの増産に言及したが、具体策について議論は深まらなかった。荒川さんは、消費者が求める価格との差について、財政支出によって埋めるべきだとの考えだ。だが難しいのはお金の使い方である。旧民主党政権のときに採用された農家への戸別所得補償政策は、うまくいかなかったと解説した。

 参院選で与党が大敗し政治が一層不安定になったが、農村の生活と農作業は日々続いている。生産者の意欲と農業の効率を高めつつ、日本の農村を持続させるような政策を早期に具体化できるかが焦点だ。


ゲスト / Guest

  • 荒川隆 / Takashi ARAKAWA

    一般財団法人食品産業センター理事長

研究テーマ:『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える

前へ 2025年08月 次へ
27
28
29
30
31
1
2
3
6
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
21
23
24
26
27
28
29
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ