2025年07月30日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「戦後80年を問う」(17) 折木良一・元統合幕僚長

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会見リポート

安全保障政策に主体性を

豊田 洋一 (日本記者クラブ理事 中日新聞東京本社論説室論説主幹)

 自衛隊トップを退いて13年がたつが、記者会見に臨む姿には依然「将たる風格」が漂う。生年は朝鮮戦争勃発の1950年。自衛隊時代はもちろん、退官後の今も日本の安全保障政策を見つめ続けている。

 会見冒頭で振り返ったのは戦後80年間の国際情勢。「安保環境はおよそ10年周期で変動し、その中で日本の安保政策も変わってきた。朝鮮戦争は日本の再軍備に影響を与え、警察予備隊、保安隊、自衛隊につながった」などと語り、「日本にとっては湾岸戦争が安保政策の転換点だった」と指摘した。

 日本は戦後、専守防衛に徹し、日米安保体制の下で自国の平和を維持してきたが、世界に視野を広げれば、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃など、今も軍事力が当たり前のように使われている。

 実力組織の元指揮官らしく「外交による平和は大事だが、平和を持続するにはどうするか、国際法理は別にして必要であれば軍事力を行使するのは世界の現実」と指摘しつつ、「国際紛争に介入しないトランプ政権の米国第一主義が、国際秩序に大きな影響を与えている。国際的に不安定な時期に入った」と分析する。

 日本も他人事ではない。周辺を見渡しただけでも中国の軍事的台頭や海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアの軍事的圧力など、情勢は穏やかではない。安全保障のジレンマに陥らないよう注意を払うのは当然としても、日米安保の不安定化を防ぎつつ、日本の防衛力を適切に整備することが必要なのだろう。

 「これからの10年が大切。周辺情勢が変わる中で、日本が主体性をしっかり持たなければならない。受動的では、相手国に戦略的な駒として利用されてしまう。日本が20年後、30年後にどういう姿を求めるのか、議論しなければならない」

 混迷の時代を生き抜く世代に課した宿題と受け止めたい。


ゲスト / Guest

  • 折木良一 / Ryoichi ORIKI

    元統合幕僚長 / former chief of staff, Japanese Self-Defense Force

研究テーマ:戦後80年を問う

研究会回数:17

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