会見リポート
2025年07月23日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「戦後80年を問う」(15) 坂東眞理子・昭和女子大学総長、初代内閣府男女共同参画局長
会見メモ
昭和女子大学総長で、初代内閣府男女共同参画局長の坂東眞理子さんが、戦後の日本の女性政策をテーマに登壇。男女雇用機会均等法、育児休業法の制定から今にいたる流れを、政策立案における苦労話などを交えながら振り返るとともに、いまだジェンダーギャップ指数148国中118位に沈むこの国の構造的な問題や課題などについて話した。
司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
※ゲストの意向によりYouTubeでの事後のアーカイブ配信は行いません。
会見リポート
「核分裂家族」制度に歪み
中村 奈都子 (日本経済新聞社編集委員)
戦後の男女共同参画・女性政策を実務者の立場から振り返り、次の時代に向けて取り組むべき課題を指摘した。
GHQによる5大改革指令の筆頭は「女性の解放」だ。憲法は男女平等を、労働基準法は男女同一賃金を規定し、民法改正で家制度も廃止された。だが男女平等の社会を実現するには時間がかかる。世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数の順位はG7の中で最下位だ。
男女雇用機会均等法を作る際、経済界は「女性が男性と同じ働き方などできるわけがない」と猛反発し、骨抜きになった。女性が結婚・出産しても働き続けるようになったのは均等法より育児休業法の影響が大きかったと振り返る。1989年に合計特殊出生率が1・57と過去最低を記録し、育児休業法は「するすると成立した」。
全閣僚が参加する男女共同参画推進本部などが立ち上がる一方で、第1次安倍内閣時代には激しいジェンダーバッシングも体験した。「女性議員の数を増やせばいいというものではない」と考えたこともある。
女性の活躍を可能にする政策は積み重ねられているのに、なぜ格差は解消しないのか。背景の一つが家族の変化だ。会社員の夫と専業主婦の妻と子どもから成る核家族は高度成長期に主流となり、これを前提として税制や第3号被保険者制度などの社会保障制度が確立した。だが今や共働き世帯が圧倒的に多く、男性の50歳時点未婚率は3割近い。離婚数は婚姻数の3分の1だ。「核家族から核分裂家族へと変わり、既存の制度に歪みが生じている」と指摘する。
性別役割に対する思い込みは社会の様々な場面にあり、女性自身が自分の可能性を抑えつけている面もある。ただ、その多くは高度成長期に確立したもので日本古来のものではない。「次の時代にどのような社会を作るのか、改めて考える必要がある」と締めくくった。
ゲスト / Guest
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坂東眞理子
昭和女子大学総長、初代内閣府男女共同参画局長
研究テーマ:戦後80年を問う
研究会回数:15