2025年07月17日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「戦後80年を問う」(14) 映画評論家 秦早穂子さん

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会見リポート

自分の目で見る大切さ

小林 伸年 (企画委員 時事通信社解説委員)

 ヌーべルバーグ(新しい波)の代表作「勝手にしやがれ」。映画会社からパリに派遣されていた秦早穂子さんは編集前の20分の映像を見て「これは私たちの時代の映画だ」と直感し、買い付けることを決めたという。タイトルも原題の「息切れ」では若者の心に響かないと考え、「勝手にしやがれ」に替えた。日本にいる上役らから猛反対に遭ったが、押し通した。アラン・ドロンの出世作「太陽がいっぱい」の邦題を付けたのも秦さんだ。

 カトリーヌ・ドヌーブさんについても興味深い話を披露した。フランスが保守的でカトリック教会の力も強かった当時、若くして未婚の母となった彼女に対する世間の反応は辛辣だった。

 そうした中で開催された1964年のカンヌ映画祭。ドヌーブさん主演の「シェルブールの雨傘」が上映され、映画が終わると観客が自然に立ち上がり、会場が大きな拍手で包まれたという。秦さんは映画のストーリーとも相まって「これも生き方ねと思った。あの拍手はカトリーヌ・ドヌーブという生意気な女の子の生き方への共感だった」とし、素晴らしい瞬間に居合わせたと振り返った。

 秦さんは渋谷のハチ公が生きていたころをご存じだ。「ハチ公はりりしい銅像とは大違い。耳の垂れ下がった汚い犬だった」と明かした。

 これらのエピソードが物語るのは、秦さんが常に本質は何かを見定めようとしていた姿勢である。そして、それは多感な少女時代をすごした戦中、戦後の体験によって培われた。「大人から教わったことがそうじゃなかった。何がどうだったかを今も探している」

 秦さんが強調したのは、自分の目で見ることの大切さ。「今の時代があの時代のように怪しい時代になっていることを痛感するから」

 生き証人の話は貴重だ。改めてそう思った。


ゲスト / Guest

  • 秦早穂子 / Sahoko HATA

    映画評論家

研究テーマ:戦後80年を問う

研究会回数:14

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