会見リポート
2024年10月04日
16:30 〜 17:30
10階ホール
パレスチナ・ガザ地区医師 イゼルディン・アブラエーシュ博士 会見
会見メモ
ガザ地区の難民キャンプ出身のアブラエーシュ博士は、パレスチナ人として初めてイスラエルの病院で働く医師となり、産婦人科医としてイスラエル人とパレスチナ人両方の赤ちゃんの誕生に携わってきた。
2009年に自宅がイスラエル軍の砲撃を受け、3人の娘と姪を失った後も「わたしの娘たちが最後の犠牲者になりますように」と共存を訴える博士の姿は感動を呼び、著書『それでも、私は憎まない』(2014年 亜紀書房)は世界的ベストセラーとなった。
ドキュメンタリー映画「私は憎まない」の公開(10月4日アップリンク吉祥寺)にあわせ来日した博士が会見した。
司会 出川展恒委員 日本記者クラブ企画委員 (NHK)
通訳 長井鞠子 (サイマル・インターナショナル)
会見リポート
「平和は力では実現できぬ」
和田 浩明 (毎日新聞社川崎支局長)
我が子の命を奪い、同胞を殺し続ける者たちの側と、平和を築けるか。その困難な問いに、当事者として明確な「イエス」を訴え続けている人、それが、パレスチナ自治区ガザ地区出身のイゼルディン・アブラエーシュ医師(69)だ。自らの体験を描いた映画「私は憎まない」(英題「I Shall Not Hate」)の日本上映を機に、現在住むカナダから来日。10月4日に日本記者クラブで会見した。
ガザ北部ジャバリア難民キャンプで生まれ育った。努力の末に産婦人科医となり、イスラエルの病院に勤務する初めてのパレスチナ人医師となった。亡き妻ナディアさんとの間に8人の子宝にも恵まれた。しかし、イスラエル軍が実施した「キャストレッド作戦」の終局に近い2009年1月16日、自宅をイスラエル軍戦車が砲撃。長女ベサンさん(21)、4女マヤールさん(15)、5女アヤさん(14)とめいのヌールさんが死亡した。他の子や親族も負傷した。
「当時、娘たちが平和への最後の犠牲なら、受け入れると言いました。残念だが最後ではなかった」
23年10月7日の発生から1年を超えた今次のガザ紛争は、終結の糸口も見えない。ガザでは4万人以上、イスラエルでも1200人の死が地元当局により報告されている。アブラエーシュ医師の親族も多数が亡くなったという。イスラエルはレバノンに戦線を拡大、イランとの衝突も懸念される。
それでもイスラエル、パレスチナの双方に対話を訴える気持ちは変わらない。「これからも主張する。銃弾は弱い者の武器であり、平和は力では実現できないということを」
即時停戦を求める一般市民の活動は日本を含め世界に広がっている。「誰かを待つのではなく、できることに自ら取り組んでほしい」。アブラエーシュ医師の日本への伝言だ。
ゲスト / Guest
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イゼルディン・アブラエーシュ
医師