2023年08月30日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「混沌の只中 水俣病を考える」原一男「水俣曼荼羅」監督と原告、支援者

会見メモ

水俣病が公式に確認されてから67年。認定審査の厳格化による患者認定や補償の差などで地域は分断されてきた。第1世代の患者の多くが亡くなり、小児性、胎児性の患者や支援者も高齢化する中、支援のあり方も変化している。

水俣病患者を追った超長編ドキュメンタリー映画「水俣曼荼羅」の監督で現在続編を撮影中の原一男さん、水俣病認定訴訟原告の倉本ユキ海さん、水俣病センター相思社の永野三智さん、水俣病協働センターに属し、患者の生活支援に従事している谷由布さんが登壇。水俣病を取り巻く現状と課題をどのように考えているのかなどについて語った。

 

司会 曽山茂志 日本記者クラブ企画委員(西日本新聞)

 

写真左から原一男さん、倉本ユキ海さん、永野三智さん、谷由布さん


会見リポート

続く水俣の不条理訴える

井田 徹治 (共同通信社編集委員)

 水俣病の公式確認から67年。国が定める「認定基準」が患者として救済されるかどうかを左右し、症状を訴えながらも患者と認められない「未認定患者」が多く生まれるという不条理を招いている。環境省は2014年、未認定患者の救済策を定めたが、申請者側に水銀摂取の客観的な証拠を求めたこともあって全面解決には至らず、未認定患者らによる裁判闘争が続いている。

 撮影に15年、編集に5年を要したという水俣病患者を追った超長編ドキュメンタリー映画「水俣曼荼羅」の監督の原一男さん、水俣病認定訴訟原告の倉本ユキ海さんと被害者の支援に取り組む永野三智さん、谷由布さんの4人が、それぞれの言葉で、水俣病とその患者の現状や課題をどう考えているのかなどについて語った。

 「医師免許を持った医者が水俣病だというのに、なぜ、行政がそれを否定できるのか」「県が審査のために指定した医師による簡単な検査で感覚障害がないとされて認められなかった」―。胎児性患者の倉本さんは、ずさんな行政の認定作業を厳しい口調で批判する。「親や伯母さんは水銀が入っているとは知らずに栄養をつけるようにと魚を私に食べさせた」と話す倉本さん。よく転んだことやボール遊びができなかったことなど、子どものころからのつらい思い出を語った。

 原監督は、60年以上にわたって水俣病を記録し続ける写真家の桑原史成さんの姿が会場にあるのを認め「私は20年だが、桑原さんは60年。それくらいの時間をかけて関わっていかないと水俣の難しさは見えてこない」と話した。

 「私たちが否定されるような国では未来の子供たちの健康も命も守れない。これ以上、汚さないで、と実体験を語り続ける」という倉本さんの言葉が心にしみる会見だった。


ゲスト / Guest

  • 原一男 / Kazuo HARA

    「水俣曼荼羅」監督

  • 倉本ユキ海 / Yukimi KURAMOTO

    水俣病被害者互助会会員/原告

  • 永野三智 / Michi NAGANO

    一般財団法人水俣病センター相思社 職員

  • 谷由布 / Yu TANI

    NPO法人水俣病協働センター所属、生活支援者

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