2023年06月06日 15:30 〜 16:30 9階会見場
ポール・ヨンソン・スウェーデン国防相 会見

会見メモ

シンガポールでアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)に出席したのち、来日したスウェーデンのポール・ヨンソン(Pål Jonson)国防相が登壇。北大西洋条約機構(NATO)加盟について「7月のNATO首脳会議には加盟できるのではないかと期待している」と述べた。質疑応答でもNATO加盟や安全保障に質問が集中した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 長井鞠子 サイマル・インターナショナル


会見リポート

中立手放す危機感と覚悟

半沢 隆実 (共同通信社論説委員)

 人口わずか1千万、北欧の小国は約2世紀の間、軍事的な「中立」を保ってきた。欧州の戦争から身を守るための知恵とも呼べる伝統を、スウェーデンは捨てようとしている。隣国ロシアが敵視する北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請だ。その背景と覚悟がうかがえる記者会見だった。

 ヨンソン国防相は会見で「昨年2月のロシアによる不法で残虐なウクライナ侵攻による欧州安全保障環境の悪化」が加盟申請の決断を促したと強調、「ロシアが大きな政治的、軍事的リスクを冒す国であることが分かった」と語った。

 淡々と話すヨンソン氏がやや表情を厳しくしたのは、ロシアの対北欧戦略に言及したときだった。「ロシアはスウェーデンとフィンランドを自分たちの影響圏に置くと主張している」と指摘し、「到底受け入れられないことだ」と語気を強めた。

 「受け入れられない」との言葉は2度繰り返された。隣に住む乱暴な巨人に対する、鋭い抵抗宣言でもある。

 会見では触れなかったが、ロシアはウクライナのクリミア半島を一方的に併合して以降、長距離爆撃機を領空近くで飛行させるなど、軍事的な動きを活発化させてきた。首都ストックホルム沖のバルト海では、ロシアとみられる不審な潜水艦の活動が確認された。蓄積された危機感が、北欧の小国を、大きな決断に踏み切らせたと言えるだろう。

 新型コロナウイルス感染が広がる前は、国会議員として毎年日本を訪問してきたというヨンソン氏。「ロシアのウクライナ侵攻によって、北大西洋地域とインド太平洋が繋がった」と世界の安全保障環境が急激に変化しているとの認識を示した。その上で防衛やハイテク技術面など、日本と幅広い分野での関係強化へ期待感も示した。


ゲスト / Guest

  • ポール・ヨンソン / Pål Jonson

    スウェーデン国防相 / Minister for Defence, Kingdom of Sweden

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