会見リポート
2025年06月19日
14:00 〜 15:30
9階会見場
「知ってもらいたい『モンゴル抑留』の真実~天皇皇后両陛下のモンゴル訪問を前に」 元読売新聞編集委員 井手裕彦さん
申し込み締め切り
ウェブ参加:締め切りました会場参加:締め切りました
会見リポート
「知られざる抑留に光を」
北野 隆一 (朝日新聞社社会部)
第2次世界大戦後に日本人が抑留されたのは、ソ連によるシベリア抑留だけではない。ジャーナリストの井手裕彦さんは読売新聞記者だった2016年から、モンゴルでの日本人抑留問題に取り組んできた。
約57万人が連行され9.6%にあたる約5万5千人が死亡したシベリアと比べ、モンゴルは抑留者約1万4千人の12.1%にあたる約1700人が死亡する過酷な環境にあった。国際法に反する民間人抑留も多かったが、シベリア抑留の陰でほとんど知られていなかった。
井手さんは、仲間の命の保証を求めて危険を顧みず当局あての「嘆願書」を書いた日本人抑留者の記録をたどろうと2020年にウランバートルの国立中央公文書館で調査。日本政府も存在を知らなかった1100ページの日本人の記録を発見した。記された379人の死亡記録のうち42人は、厚生労働省が身元特定に至っていなかった。井手さんが持ち帰った記録をきっかけに、34人の身元が特定されたという。
7月には天皇、皇后両陛下が国賓としてモンゴルを公式訪問する。両陛下が、抑留中に死亡した日本人の慰霊碑を訪ねて供花する予定であることに井手さんは注目。「平成の天皇皇后両陛下(上皇ご夫妻)は戦後60年にサイパン、戦後70年にはパラオと、南方の戦没者を慰霊されてきた。戦後80年は、天皇として初めて、北方の戦争犠牲者に対する慰霊の旅となる。ご訪問を機に、置き去りにされてきたモンゴル抑留問題に光を当てたい」と考えている。
井手さんは5月27日から6月13日にモンゴルで調査。新たな死亡記録を入手したほか、日本政府が把握する日本人墓地16カ所以外の埋葬地を見つけ、厚労省に伝えた。これまで8人の遺族を探し出して直接、記録を届けたという。「砂漠から1本の針を探し出すような作業。取り組みを広く周知してほしい」
ゲスト / Guest
-
井手裕彦 / Hirohiko IDE
ジャーナリスト(元読売新聞大阪本社論説委員・編集委員) / journalist