会見リポート
2025年06月20日
15:00 〜 16:00
10階ホール
「戦後80年を問う」(11) 音楽評論家・作詞家 湯川れい子さん
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会見リポート
「音楽と平和」に思いを込め
明珍 美紀 (毎日新聞社編集局)
敗戦の混乱期、ラジオの米軍放送から流れるスイングジャズに夢中になり、中学1年のころ、聞き覚えのあるメロディーが心に響いた。戦時中、召集された長兄が、出征直前、東京・目黒にあった自宅に防空壕を掘っていた際に口笛で吹いていた曲だった。
「曲名を知りたい」と毎日、ラジオを聴き続け、約3年後、ついにハリー・ジェームス・オーケストラの「スリーピー・ラグーン」だと分かった。20歳で初めてエルビス・プレスリーの歌を聴き、鳥肌が立つほどの衝撃を受けた――。
国内初の女性の音楽評論家、作詞家、翻訳家など、さまざまな「顔」を持つ湯川れい子さんは、音楽とともに歩んできた道のりを、しっかりとした口調で、時には懐かしそうな表情で話した。
ビートルズの初来日(1966年)時に単独インタビューを行い、米ラスベガスに飛んでプレスリーと初対面(71年)を果たすなど、世界的なアーティストらと積極的に交流する一方、日本の社会的、政治的な問題に対して自分の考えを述べる。そんな姿を見るたびに「戦争の時代を知る世代の一人だ」と感じてきた。
会見でも、海軍大佐の父と武家出身の母の間に生まれ、両親は洋間の蓄音機から流れるレコードに合わせてダンスし、その2人の間で幼い自分も体を揺らしたという思い出が語られた。けれども、その後、出征した長兄はフィリピンで戦死し、軍令部の会議室に連夜、詰めていた父も敗戦の前年に病気で急逝。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃など現在の状況と重ね合わせて「戦争には正当な理由はない」と、力を込めた。
89歳のいまも現役で仕事を続ける湯川さん。記念の揮ごうでは〝音楽は愛〟という言葉とすてきなイラストを寄せてくれた。
ゲスト / Guest
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湯川れい子 / Reiko YUKAWA
作詞家、音楽評論家
研究テーマ:戦後80年を問う
研究会回数:11