2025年06月18日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「韓国大統領選を読む」(4) 寺下和宏・東京大学大学院講師

会見メモ

比較政治学が専門で、韓国と日本の社会運動・市民社会などを研究する東京大学大学院総合文化研究科講師の寺下和宏さんが、「韓国におけるジェンダーと世代による分極化」と題し登壇。既存の研究やデータから、今回の大統領選の投票行動から見える分断の実像を解説するとともに、今後の課題などについて話した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)

 

※ゲストの希望によりYouTubeでのアーカイブ配信は行いません。ご了承ください。


会見リポート

投票先の分極化「世代差にも目を向けて」

富永 鈴香 (朝日新聞社ネットワーク報道本部)

 6月に投開票があった韓国大統領選挙は、20~30代の若年層の男女間で投票先に差があることが注目された。しかし、寺下和宏氏は「ジェンダーによる分断は若い人のせいにしてはいけず、分極化を語るときは世代差にも目を向けるべきだ」と指摘する。

 地上波放送3社による出口調査によると、進歩系の「共に民主党」候補者だった李在明氏に投票したのは、20代女性は58.1%だったのに対して20代男性は24%にとどまった。30代でも、女性は57.3%に対し、男性は37.9%と、男女間で投票先の差が顕著だった。これに対して、40代と50代は男女ともに7割が李在明氏を支持していた。

 この結果を踏まえて、寺下氏は若年層では投票先が分極化しているが、40代50代が共に民主党支持の傾向が固定化していることの方が奇妙だとした。

 また、李俊錫候補は「女性器」に関する不適切な発言をしたにもかかわらず、若年女性からも一定の支持を得ていた。有権者が重視する争点について「ジェンダー平等だけが20~30代の投票行動を規定しているわけではない。新しさや世代交代も要因となっていたか」とみている。

 討論会で話された内容を見ると、前回(2022年)までの選挙に比べて、今回は候補者による「ジェンダー」に関する言及は大幅に減っていた。しかし国内では賃金格差などの「既存世代が積み残してきた」課題は山積している。

 寺下氏の調査によると、30代以下の若年男性も、政策によってはジェンダー平等を支持していることがわかった。「むしろ既存世代の方が支持していないとさえ言える」とし、「既存世代がジェンダー不平等を解決できない根本的な原因ではないか。選挙で語られなかった根本的な問題を対話と説得で解決すべきだ」と話した。


ゲスト / Guest

  • 寺下和宏 / Kazuhiro TERASHITA

    東京大学大学院講師

研究テーマ:韓国大統領選を読む

研究会回数:4

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