2025年06月06日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「韓国大統領選を読む」(3) 西野純也・慶應義塾大学教授

会見メモ

韓国大統領選で進歩系「共に民主党」の李在明前代表が当選し、第21代大統領に就任した。

現代韓国朝鮮政治、東アジア国際政治、日韓・日米韓関係が専門の西野純也さんが「李在明政権発足と外交安保政策の展望」と題し登壇。結果分析や、公約や人事などから新政権の外交安保政策などを展望するとともに、日韓関係の課題などについて話した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)


会見リポート

前大統領審判で消極的選択

阪堂 博之 (共同通信社出身)

 韓国大統領選は事前の予想通り、野党「共に民主党」の李在明氏が勝利したが、得票率50%を超えられず、与党「国民の力」の金文洙氏との差は8ポイント余りにとどまった。西野教授は「非常戒厳を発令した尹錫悦前大統領に対する審判」で「今回は与党に投票するわけにはいかない」と有権者が消極的選択をした結果だったとの分析を示した。

 その上で、司法リスクなどを抱える李在明氏が評価された理由として①貧困から這い上がってきたサクセスストーリー②京畿道知事など地方首長時代の行政手腕③巨大政党を自分の党につくりあげた政治力︱を挙げた。与党は保守陣営が分裂し、前政権の非常戒厳と弾劾罷免に対して決然とした姿勢を示せなかったことが敗因だったとした。

 選挙結果は同時に、地域間や世代間の対立など韓国の政治や社会の分断状況を浮かび上がらせた。国会(定数300)の170議席を占める政党を掌握する大統領として「民主化後最も力強い政権」になる可能性がある、としながらも「重要なのは、その強大な力をどこに使うかだ」。李在明大統領は就任演説で「国民統合」を強調したが、西野氏は「国民統合より改革、つまり尹政権の誤りを正すことを重視するだろう」と展望した。

 日韓関係はどうなるか。選挙公約や外交安保スタッフの顔ぶれなどから「関係を安定的に維持したいというのが李在明政権の強い本音ではないか」と述べた。韓国にとってもトランプ関税など外交課題が山積する中、「日本とは新たな対立要素を抱えたくない。できれば協力して臨みたいという考えもある」という。

 西野氏は李在明氏を「特定の理念に縛られない、実用主義という観点を持っている」と評した。「日韓関係で一番重要なのは政治家同士の関係」とも指摘した。国交60周年の今年、どういう外交関係を構築するか。それが日韓双方の政治家に問われている。

 


ゲスト / Guest

  • 西野純也 / Junya NISHINO

    慶應義塾大学教授、慶應義塾大学東アジア研究所長、慶應義塾大学朝鮮半島研究センター長 / Professor, Keio University / Director, Keio Institute of East Asian Studies / Director, Keio Center for Contemporary Korean Studies

研究テーマ:韓国大統領選を読む

研究会回数:3

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