2025年06月20日 12:00 〜 13:30 10階ホール
「イスラエルの対イラン攻撃 その背景と影響」立山良司・防衛大学校名誉教授、坂梨祥・日本エネルギー経済研究所中東研究センター長・研究理事

会見メモ

6月13日にイスラエルがイランの核関連施設などへの攻撃を開始してから1週間がたった。イランが報復攻撃に出たことにより交戦状態が続く中、アメリカのトランプ政権は、イスラエルとイランの交戦に関与するかを「トランプ大統領が今後2週間以内に決定する」と明らかにした。

中東現代政治を専門とする防衛大学校名誉教授で日本エネルギー経済研究所客員研究員の立山良司さん(写真左から1枚目)、イラン現代政治などを専門とする日本エネルギー経済研究所中東研究センター長・研究理事の坂梨祥さんが登壇。攻撃の背景や狙い、今後考えうるシナリオなどを解説した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

イラン 核断念せぬ可能性

 6月13日、イスラエルはイランへの大規模攻撃を始めた。核開発をめぐる米イラン協議が続く中での「奇襲」だった。「まさか」と同時に「またか」との思いがよぎった。ネタニヤフ首相がまたしても、自らの政治生命のために軍事行動に出たかと。

 立山氏は、このような近視眼的な見方にやんわりくぎを刺した。

 「一面としてありうるが、あまり強調するのはイスラエル政治を見間違えている」

 この20年、イスラエルはイランの核開発を阻止するため、サイバー攻撃など様々な妨害工作をしてきた。イランの核兵器保有に対するイスラエル国民の脅威認識は、「正しいかどうかはともかく、ものすごく強い」。こうした認識が攻撃の背景にある。

 ただ攻撃は核施設にとどまらず、病院やエネルギー施設なども標的となっている。私事だが、特派員駆け出しで駐在したテヘランで、日本に映像を伝送するため幾度となく訪問した国営放送局も攻撃を受けた。

 イランは、ミサイルやドローンで報復攻撃を続けている。坂梨氏は「イラン側から攻撃をやめることはない」と見通す。ケンカを売られた側が降参すれば、先制攻撃を正当化してしまうからだ。制空権を奪われたイランだが、小型高速艇を使ったタンカー攻撃など様々な「非対称戦略」の切り札を持つという。

 坂梨氏は「イランが核開発計画を放棄しない可能性は非常に高い」と指摘した。立山氏も同じ見方だ。空爆で核施設が破壊されても知識やノウハウは残る。核兵器を持たないから攻撃を抑止できなかったとの思いが強まるのも容易に想像できる。

 これからの焦点は何といってもアメリカの出方だ。双方の市民を巻き込んだ攻撃の応酬はいつまで続くのか。ネタニヤフ首相の出口戦略について、立山氏は「ない」と断言した。この点は、ガザ攻撃などと同様、「またか」のようだ。


ゲスト / Guest

  • 坂梨祥 / Sachi SAKANASHI

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター長・研究理事 / Senior Research Director, Director, the Japanese Institute of Middle Eastern Economies (JIME)

  • 立山良司 / Ryoji TATEYAMA

    防衛大学校名誉教授、日本エネルギー経済研究所客員研究員 / professor emeritus, National Defense Academy

研究テーマ:イスラエルの対イラン攻撃 その背景と影響

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