会見リポート
2025年06月16日
16:30 〜 17:30
10階ホール
日本学術会議歴代会長 会見
会見メモ
日本学術会議を国から独立した法人とするための新法が6月11日に成立したことを受け、学術会議の会長経験者が「石破茂首相に対し、新日本学術会議法の成立に際し、学問の自由の保障、日本学術会議の独立性と自主性の尊重と擁護を要請する声明」をまとめ、会見に臨んだ。
声明は吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極壽一、梶田隆章の6氏連名。うち吉川さん、梶田さんを除く4氏が登壇し、新法が成立したことに遺憾の意を示すとともに、2026年10月の施行に向けて学術会議の独立性と自主性の尊重、学問の自由の保障に配慮する項目を盛り込んだ衆参両院の付帯決議の実現を強く求めていくよう学術会議に訴えた。
司会 行方史郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)
※写真左から1枚目から黒川さん、大西さん、山極さん、広渡さん
「石破茂首相に対し、新日本学術会議法の成立に際し、学問の自由の保障、日本学術会議の独立性と自主性の尊重と擁護を要請する声明」
会見リポート
政府と学術会議、信頼関係の再構築を
大山 博之 (読売新聞社科学部)
日本学術会議を「国の特別機関」から特殊法人にする新法が成立したことを受け、会長経験者6人が、同会議のアカデミーとしての独立性を尊重するよう政府に求める声明を発表した。山極壽一、大西隆、広渡清吾、黒川清の4氏(梶田隆章、吉川弘之の2氏は欠席)が記者会見に臨み、「政府と学術会議の信頼関係の再構築が重要だ」と指摘した。
学術会議は、政府からの独立性への懸念が払拭できないなどとして、4月に開かれた総会で法案の修正を求める決議を行っていた。それにもかかわらず原案のまま可決されたことから、声明では「心から遺憾の意を表明する」とした上で、信頼関係の再構築に向けて、学術会議の独立性や学問の自由の保障を約束するよう首相に求めた。
新法では首相が任命する「監事」や「評価委員会」などが設けられ、学術会議の活動を縛るのではないかとの懸念が示されていたことから、独立性や自主性を尊重するとの付帯決議も衆参両院で採択された。これに対し山極氏は「付帯決議には拘束力がない。国立大学法人化でも、大学の自由を尊重する付帯決議がなされたが、守られなかった」と語った。
会見では、来年10月の新法人発足に向けた体制作りも課題として上がった。最初の新会員選考は、首相が指名する有識者と協議した上で学術会議会長が任命する「候補者選考委員会」が担う。委員には現会員も就任でき、これまで学術会議が採用してきた、現会員が新会員を推薦する「コ・オプテーション制」に配慮した形だ。
大西氏は「コ・オプテーションにも欠点はある。会員選考は分野、性別、活動地域、国籍も含めて多様性を確保する必要がある」と述べ、現役会員に「法人化を機に政府の一員というスタンスから、国民とともにあり社会の諸課題に科学者の立場から関わる大きな役割を改めて認識すべきだ」と呼びかけた。
ゲスト / Guest
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山極壽一
日本学術会議第24期会長
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大西隆
日本学術会議第22、23期会長
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広渡清吾
日本学術会議第21期会長
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黒川清
日本学術会議第19、20期会長