2025年06月03日 15:30 〜 17:00 9階会見場
「戦後80年を問う」(8) 戦後日本型雇用システムの諸問題 濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究所長

会見メモ

労働政策に詳しく、「ジョブ型雇用」の名付け親としても知られる濱口桂一郎さんが、「戦後日本型雇用システムの諸問題」をテーマに登壇。ジョブ型や日本型雇用システム、就職と採用、賃金、解雇などを巡る諸問題について解説した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)


会見リポート

雇用システムめぐり繰り返される議論

北川 慧一 (朝日新聞社経済部)

 雇用をめぐる議論の変遷から戦後の日本社会をひもといた。

 「実は今、あなた方が新しいと思っていることが、実は古いというのは、割と重要な話ではないか」

 濱口氏の会見はこんな言葉から始まった。

 雇用や賃金のあり方をめぐっては、似たような議論がこれまで繰り返されてきたというのが肝だった。第二次安倍政権が進めた「働き方改革」で打ち出された「同一労働同一賃金」や「労働移動の円滑化」という言葉は、実は1960年に池田内閣が策定した「所得倍増計画」で掲げられていたという。

 濱口氏が名付け親として知られ、近年「異様な流行」をしている「ジョブ型」をめぐる議論もまたそのひとつだ。政府が2024年に「ジョブ型人事指針」という導入企業の事例集をまとめるなど注目を集めてきた。労働者がなすべき職務(ジョブ)を契約で明確に規定するのが海外の雇用システムで、職務を限定せずに採用する日本の「メンバーシップ型」と区別される。しかし、企業によるこうした「ジョブ型」の相次ぐ導入も、濱口氏には1990年代に一部の企業が導入して失敗した成果主義賃金のリベンジと映る。

 「ジョブ型、メンバーシップ型、というのは社会システムレベルの問題なので、会社が勝手に、自由に決められるものものですらない」

 「ジョブ型」などと称される人事制度や賃金制度の流行について、濱口氏は「大部分の企業経営者や人事担当者の頭の中にあるのは、能力が高いことになっているけれど全く貢献が足りない中高年を何とかし(人件費を抑え)たいということではないか」と指摘する。足もとでは歴史的な物価高や人手不足のなかで、長年停滞してきた日本の賃金がようやく動き始めた。そんな中で濱口氏の指摘は、賃金制度改革をうたい中高年の賃下げをはかる一部の企業経営者に対する警鐘のように見えた。


ゲスト / Guest

  • 濱口桂一郎 / Keiichiro HAMAGUCHI

    労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究所長

研究テーマ:戦後80年を問う

研究会回数:8

前へ 2025年06月 次へ
1
2
7
8
9
10
12
13
14
15
21
22
23
24
25
26
27
28
29
1
2
3
4
5
ページのTOPへ