2023年04月06日 10:30 〜 11:30 10階ホール
ジュリア・ロングボトム駐日英国大使 会見

会見メモ

英国政府は今年3月に国際戦略指針「統合レビュー改訂版」を公表、同31日にはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への加入が実質認められた。

ジュリア・ロングボトム(Julia LONGBOTTOM)駐日英国大使が登壇し、統合レビューやTPP、米英豪の安全保障枠組み「AUCUS」や、この間の防衛・安全保障、経済における動き、G7広島サミットにおける議長国日本への期待などについて語った。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)

通訳 池田薫 サイマル・インターナショナル

 

★大使のスピーチ(英語版)Transcript of the speech (in English)

 


会見リポート

TPPで役割果たす用意

二村 伸 (NHK専門解説委員)

 EU離脱から3年余り。英国はインド太平洋地域への関与を強め、安全保障では米豪とAUKUS(オーカス)を創設、経済ではTPP=環太平洋パートナーシップ協定加入などEUの軛から解き放され独自の政策を遂行している。

 そのカギを握る日英関係についてロングボトム大使は「共通の世界観を保有し、脅威に対する共通の理解がある」と1月の日英首脳会談でのスナク首相の発言を引用し、「日英のパートナーシップはこの数十年で最も強固であり、英国政府も高く評価している」と述べた。大使は3度目の日本赴任で通算の滞在歴は10年を超える日本通であり、英国の外交・安全保障政策とTPP加入の意義、そしてG7サミットへの期待について流暢な日本語で語った。

 英国は一昨年発表した外交・安全保障政策の指針「統合レビュー」をロシアのウクライナ侵攻を受けて今年3月に改定したが、中国を最大の脅威と見なしていることは変わっていない。中国との向き合い方について大使は「国家安全保障の保護に基づいた新たなアプローチが必要だ」として同盟国やパートナー国との連携の重要性を強調する一方で、「協力すべき分野については建設的に関与する」と述べ、体制的には競争相手ながら経済的には重要なパートナーであり気候変動対策などで協力すべきだとの認識をあらためて示した。

 英国のTPP加入は「英国とTPP加盟国双方にとって利益だ」と意義を述べた上で「TPPの将来のあり方を決めるために英国は役割を果たす用意がある」としてルールの策定に貢献しうるとの考えを示した。

 最後に大使は、日本でLGBTQの差別禁止法や同性婚の法制化が遅れていることについて、「英国では娘の同性婚に社会の厚いサポートがあった」と述べ、「遠くない将来日本でも実現してほしい」と注文をつけた。「共通点が多い」両国とはいえ、まだまだ大きな開きがあることを思い知らされた。

 


ゲスト / Guest

  • ジュリア・ロングボトム / Julia LONGBOTTOM

    駐日英国大使 / Ambassador to Japan, UK

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