2023年03月30日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「国籍はく奪~国籍法11条をめぐる問題」 山浦善樹弁護士(元最高裁判事)、仲晃生弁護士

会見メモ

国籍法11条により日本国籍を失った人たちによる違憲訴訟(2023年2月21日に二審判決が出され、原告の訴えは退けられた)で代理人を務める仲晃生弁護士(写真左)と、この規定で自身の家族が日本国籍を失うことになった元最高裁判事の山浦善樹弁護士(同右)が、この訴訟の争点や複数国籍をめぐる他国の例などについて話した。

 

司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 


会見リポート

「活躍の足を引っ張る条項」

北村 和巳 (毎日新聞社論説委員)

 国際化が進む中で起きている問題の切実さに、登壇した弁護士2人が気づかせてくれた。

 国籍法11条は「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と定める。この規定は憲法違反だとして、欧州在住の8人が訴訟を起こしている。

 スイスで事業を営んでいる原告の1人は、公共事業の入札に必要なため、スイス国籍を取得した。日本国籍を失うことは知らなかった。

 別の原告もスイスで働いている。生活上の地位安定のためスイス国籍取得を希望しているが、日本人であることへの思いは断ち切れない。

 居住国では、その国籍がないと権利が制限される。一方で日本国籍の喪失は、アイデンティティーに関わる。コロナ禍で外国籍の人の出入国が制限され、現実の支障も出た。

 弁護団の事務局を務める仲晃生氏は「海外で活躍しようとする日本人を応援するのではなく、足を引っ張る条項だ」と指摘した。

 国籍法11条は明治時代から残る規定だ。仲氏は「もともと『臣民』の範囲を画するためのもの」と解説する。現在の社会状況から見ても、法制定の経緯から見ても、時代遅れであることは否定できない。

 山浦善樹氏は実体験に基づき発言した。研究者として英国で暮らす娘の子が英国籍を取得したのに伴い、「孫が『外国人』になり、うろたえた」と語った。マチ弁から最高裁判事になった山浦氏は、問題の解決が「最後の仕事と思っている」と話す。

 日本では「国籍は一つ」という意識が根強い。国側も外交保護権や納税などを挙げ、複数国籍の弊害を強調している。だが仲氏は「迷信の類い」と断じた。外国籍を取得しても元の国籍を自動的に失わない国が150に上るのも、その証左という。

 二刀流の大谷翔平選手を例に引いて、「常識」を乗り越える大切さを説く仲氏の言葉は印象的だった。


ゲスト / Guest

  • 山浦善樹 / YAMAURA Yoshiki

    日本 / Japan

    元最高裁判事、弁護士

  • 仲晃生 / NAKA Teruo

    日本 / Japan

    弁護士

研究テーマ:国籍はく奪~国籍法11条をめぐる問題

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