2023年03月10日 10:15 〜 11:15 10階ホール
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使 会見

会見メモ

ロシアによる侵攻から1年がたった現状についてコルスンスキー大使が話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

日本の復興支援に期待

渡邊 健作 (時事通信社外信部)

 「初めて日本を訪れたのは大使就任前の2016年の福島でした」。東日本大震災から12年を前に行われた会見で被災地へのメッセージを問われ、こう切り出した。ウクライナ政府視察団の一員として、大震災で事故を起こした福島第一原発を視察したという。自国のチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故にも触れ、「過去から教訓を学び、将来の事故を防がなくてはならない」と訴えた。

 ウクライナでは、「核の惨事」は過去の話で終わらない。ロシア軍の侵攻でザポロジエ原発が攻撃にさらされ、核兵器使用の脅しにも直面している。5月に広島市で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)にゼレンスキー大統領が招待されれば、現在進行形の危機について世界に訴える機会になると期待する。

 ロシア軍の侵攻に対抗するウクライナにとって西側諸国からの支援は生命線だ。各国に戦車や戦闘機の供与を求めているが、「日本国憲法を尊重している」と述べ、兵器輸出を禁じる日本の「制約」には理解を示す。その上で、大震災や第2次世界大戦から立ち上がった日本に「復興支援でのリーダーシップを発揮することを期待する」と語った。

 一方、ロシアと友好関係にある中国による和平交渉への関与には慎重な構えを示した。中国が2月に示した「和平案」について、主権尊重への言及や核兵器使用への反対など評価できる点もあるとしたが、「和平を実現するための具体策はあいまいだ」と指摘する。中国の指導者がウクライナを訪問し、ロシア軍の侵略によって何が起きたかを実際に見ることが重要だと強調した。

 日本記者クラブで会見を行うのは、ロシア軍によるウクライナ侵攻直前の22年2月9日から数えて4回目。日本人に向けて、侵攻の現状について積極的な情報発信に努め、日本におけるウクライナの「顔」になっている。


ゲスト / Guest

  • セルギー・コルスンスキー / Sergiy Korsunsky

    ウクライナ / Ukraine

    駐日ウクライナ大使 / Ambassador of Ukraine to Japan

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