2023年03月09日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「ウクライナ」(21) 高橋杉雄・防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長

会見メモ

防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄さんが、「ロシア・ウクライナ戦争の1年の評価、今後の見通し」と題し、原因論や意思決定の合理性を巡る論点、核抑止、今後の展望などについて話した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「異なる自己認識」侵攻招く

小熊 宏尚 (共同通信社外信部編集委員)

ウクライナ戦争開始から1年が過ぎても、世間に漂い続ける問いがある。米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)拡大がロシアを圧迫しなければ、プーチン大統領は戦争を始めなかったのでは、という声だ。高橋氏はこの疑問に丁寧に答えた。キーフレーズは「自分は何者か」。国家のアイデンティティーがロシアやウクライナとNATOの関係を規定し、戦争につながったとの見方を示した。

 冷戦終結後の1990年代、旧ソ連・東欧には選択肢があった。欧州の一員となるか、米欧とは異なる存在だと自認し、別の勢力圏を求めるか。東欧は西欧との合流を選び、次々にNATOに加盟した。

 米欧は当時、弱った旧東側を支援し、民主主義、市場経済に軟着陸させる政策を推進。従ってロシアは東欧と同じ道を選び得たが、そうしなかった。ロシアは米欧と大きく違う上、独自の勢力圏をつくる能力も権利もある大国だと考えたからだ。エネルギー価格高騰で経済が復活したのも、大国意識を後押しした。

 NATO拡大が脅威か否かは、それを見る者次第。「自分たちは民主主義とは異なる価値観を持つ大国だ」と定義すれば脅威となり、米欧は協力すべきパートナーと見れば脅威ではない。高橋氏はこう強調した。

 一方、ウクライナは欧露の間で揺れ動きながら、2014年以降「我々はロシアの一部ではない」として、欧州連合(EU)やNATOへと向かう。

 西を向くウクライナと、西におびえるロシア。この根深い差異が戦争を不可避にしたと高橋氏は考える。その上で、ロシアと親和性が高い中国の台頭や、バイデン米政権のアジア優先戦略も重なり、プーチン氏がウクライナ侵攻に踏み切る「機会の窓」が20年代前半に開いていく。

 戦争は米欧の責任だとロシアは訴えるが、高橋氏は説く。「ロシア自身が未来を選んだ結果が今あるのです」


ゲスト / Guest

  • 高橋杉雄 / Sugio TAKAHASHI

    防衛研究所政策研究部防衛政策研究室長

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:21

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