2023年03月22日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「かかりつけ医を考える」(9) 武田俊彦・元厚生労働省医政局長

会見メモ

2017年から2018年に厚生労働省医政局長を務めた武田俊彦さんが登壇。「かかりつけ医制度とその論点」をテーマに、背景や論点、かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けた環境整備のあり方などについて話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

 


会見リポート

「医療の原点」から「かかりつけ医」を問う

尾﨑 雄 (日本経済新聞出身)

 医療は医学の社会的適用とされる。このため、その仕組みの枠内でもサービス提供にかかわる諸団体が利害の得失を巡り、難しい理由を言い立て合うやりとりが盛ん。医療制度の枠に手を付けようとすると、ただ事では済まない。受益者である国民を蚊帳の外に置いたかっこうで市民的な理解を超えた神学論争の様相が濃くなる。武田氏は「医療の原点」に立ち返って神学論争を整理し、「欲張り村の村長さん」的な開業医を「かかりつけ医」の登録制によって新たな秩序に組み入れようともくろむ。その突破口を横倉義武元日本医師会長が世界医師会の大会で行った演説に求めた。

 横倉氏は住民を分け隔てなく診療した医師の父親と自らの着物を売って貧しい患者の診療費や薬代に充てた母親の背中を見て成長したことが医師を志す原点だった。このエピソードが欧米の医師から喝采を浴び、とりわけ資本主義大国のアメリカの医師が絶賛したという。武田氏はこの逸話を抜け目なく引用し、コロナ禍で住民のために開業医を動員するリーダーシップを発揮することを怠った日医指導部の機能不全をやんわりと突いた。「かかりつけ医」制度化の議論を厚労省ペースに引きつける狙いだろう。 

 国民感情に訴える横倉演説を突破口に「かかりつけ医」が神学論争に至った過去の言説とその経緯を手際よく整理したストーリーを一瀉千里(いっしゃせんり)に展開した。身近に居て、あらゆる健康・医療相談にチームで対応し、患者に寄り添って生活を支え、医療費の抑制に貢献する「かかりつけ医」の役割を医療制度化する。そのようにして少子高齢化を持ちこたえるための医療制度改革を進める法案審議を促す意図がありあり。対立をあおる報道を慎むようメディアに求めつつ、法案に反対する日医側には国民を説得する言説や判断材料の提出を迫った格好である。


ゲスト / Guest

  • 武田俊彦

    元厚生労働省医政局長

研究テーマ:かかりつけ医を考える

研究会回数:9

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