2023年03月08日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「3.11から12年」(8) 達増拓也・岩手県知事

会見メモ

「3.11から12年」のシリーズ最後のゲストとして、岩手県の達増拓也知事が登壇。「東日本大震災津波とこれからの岩手県」と題し、復興の進捗や継続して取り組むべき課題、将来発生しうる巨大地震津波への対策、復興を通じた地域振興策について話した。

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)


会見リポート

避難者の心の問題、複雑化

高成田 享 (朝日新聞出身)

 ハード面での被災地の復興は「ほぼ完了した」として、宮古・盛岡間の横断道、八戸・仙台間の三陸沿岸道など復興道路の開通を例示した。ソフト面では、被災者の心の問題が時間の経過とともに複雑化し、対応の必要性が高まっていると言う。

 また、当初想定されていなかったのが主要魚種の不漁問題で、「復興に影を落としている」と言う。気候変動による海水温の上昇が原因とみられ、サケ、サンマ、スルメイカなどドル箱の魚種がほとんど取れない状態になっている。その対策として、サケ・マス類の海面養殖やウニの畜養など付加価値の高い漁業に取り組んでいるという。

 国の中央防災会議が発表した日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震による被害想定をもとに岩手県の被害を予測したところ、最悪の場合は津波で7000人の死者という東日本大震災津波を上回る数字になった。その対策が新しい課題になってきたわけで、久慈市役所のように移転を検討したり、新しく整備した避難場所が津波の浸水地域になったりするなど、「復興のゴールが遠のいた」という声も出てきた。このため、避難所の確保などハード面の施策とともに、避難を速める避難意識の向上などソフト面の対策で、「犠牲者ゼロを目指す」と語った。

 復興による地域振興について、道路などのインフラ整備によって、クルーズ船による観光の範囲が広がったり、自動車や半導体関連の企業立地が増えたりしている。過去に戻る復興ではなく、未来につながる「より良い復興」(ビルド・バック・ベター)になってきていると説明した。

 大谷翔平選手のような人材が岩手から出たのは、新幹線やスポーツ文化施設など社会資本の整備が基盤になったとして、復興事業も全国や世界で羽ばたく人材を輩出することにつながると展望を語り、揮毫も「希望」と書いた。


ゲスト / Guest

  • 達増拓也 / Takuya TASSO

    岩手県知事 / Governor, Iwate

研究テーマ:3.11から12年

研究会回数:8

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