2022年12月15日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「3期目の習近平体制」(2) 3期目の政策課題 柯隆・東京財団政策研究所主席研究員

会見メモ

東京財団政策研究所主席研究員の柯隆さんが登壇。習近平体制の下での今後の政策課題や、日中関係について話した。

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

「ゼロコロナ」瀬戸際の転換

川瀬 憲司 (日本経済新聞社編集委員)

 10月の中国共産党大会で更に強固な政権基盤を手にした習近平指導部が固執してきた「ゼロコロナ政策」。そこからの大転換に舵を切り始めたことについて、東京財団政策研究所主席研究員の柯隆氏は、「政権がひっくり返される可能性があった」と語り、追い詰められた上での選択だったとの見方を示した。

 直接の引き金は、中国各地で広がった若者を中心とする市民が白い紙を掲げて抗議した、いわゆる「白色革命」だが、柯氏はエコノミストとして、経済の側面からも解説した。 

 柯氏の見立てでは、中国経済は年5%成長が可能なはずなのだが、ゼロコロナ政策が生産性の足を引っ張り、「成長したくてもできない状況」と指摘。今年は通年で3%に届かず、年初に掲げた5.5%前後の政府目標を大きく割り込むとの予想だ。

 経済活動の停滞は、習指導部が最も恐れる失業、とりわけ公式統計でさえ約20%に達した都市部の若年失業率に表れている。若者の失業はそれ自体が社会不安の種だが、不動産不況にも追い打ちをかける。中国では結婚の前提として、男性は相手の女性から住宅取得を求められるのが常で、仕事がなければそれは叶わない。「30年前に日本が経験したバブル崩壊、中国はその轍を踏む可能性が出てきた」とも警告する。 

 柯氏は中国政府がPCR検査に多額の費用をかけ続けたことを惜しむ。その財源で海外から有効性の高いワクチンを購入し、接種率の低い高齢者らに投与しておけば、懸念される医療崩壊の恐れも軽減されたはずだ。しかし、柯氏が「愛国主義の罠」と呼ぶ、国産ワクチンへのこだわりがこれを阻んだ。 

 柯氏が本件において唯一、習指導部を評価したのは、曲がりなりにも政策転換に踏み切ったことだ。「かつての毛沢東であればもっと暴走したと思う」。毛氏並みの地位や権威を欲しているように見える習氏の勇気ある決断を讃えた。


ゲスト / Guest

  • 柯隆 / Ke Long

    東京財団政策研究所主席研究員 / The Tokyo Foundation for Policy Research

研究テーマ:3期目の習近平体制

研究会回数:2

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