2022年12月05日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「中間選挙後の米国と世界」(4) 現代のポピュリズムの新展開とその文脈 水島治郎・千葉大学大学院教授

会見メモ

『ポピュリズムという挑戦 岐路に立つ現代デモクラシー』(2020年2月、岩波書店)『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』(中公新書、2016年) などの著書がある水島治郎・千葉大学教授が、欧米のポピュリズムの動向について話した。

 

司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

ポピュリズムの燃料、グローバル化への不満

石黒 穣 (読売新聞能登支局長)

 自分こそを人民の代表と位置づけ、グローバル化を敵視して自国第一主義を掲げる。米中間選挙の後、さっそく次期大統領選に名乗りを上げたトランプ氏は水島さんが定義するポピュリストの要素がそろう。

 その米国以上にポピュリズムが勢いづいているのが欧州だという。

 2022年は、フランス大統領選で国民戦線のマリーヌ・ルペン氏が40%以上得票し、イタリアではメローニ首相の右派連立政権が発足、スウェーデンではネオ・ナチ運動が源流のスウェーデン民主党が第2党に躍進した。いずれも右派ポピュリストが伸長した例だが、同時に、反緊縮、反格差を叫ぶ左派ポピュリストの存在感も増している。

 中道の左右2大勢力が欧州政治を支配した時代はとうに終わり、右派ポピュリスト、左派ポピュリストが加わって「四つ巴」の構図が出現したと水島さんは述べる。その結果、既成政治は融解した。

 日本はどうか。水島さんによれば日本維新の会、NHK党、参政党の三つが右派ポピュリスト、れいわ新選組が左派ポピュリストに分類できる。都民ファースト、減税日本はイデオロギー的に中間のポピュリストにくくれる。ポピュリスト系政党は数だけなら欧州に引けを取らないが、自公連立政権が軸となる既成政治の枠組みを揺るがす力はない。

 欧州に比べて日本のグローバル化が遅れているからだと水島さんは言う。日本経済はさまざまな規制で国際競争から守られ、移民も受け入れてこなかった。ポピュリズムの燃料となる、グローバル化に対する人々の不満が日本では薄いのだという。

 日本の過去30年の超低成長も、経済のグローバル化に消極的で規制改革に後ろ向きだった結果ではなかったか。今日の「安い日本」と引き替えに既成政治の安定があると知るとやるせない心境になる。


ゲスト / Guest

  • 水島治郎 / MIZUSHIMA Jiro

    日本 / Japan

    千葉大学院社会科学研究院教授 / professor, Chiba University

研究テーマ:中間選挙後の米国と世界

研究会回数:4

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