2022年12月08日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「新型コロナウイルス」(81) 清野智・日本政府観光局(JNTO)理事長

会見メモ

政府は10 月、新型コロナウイルスの水際対策を大幅に緩和した。

日本政府観光局(JNTO)の清野智理事長が「『観光先進国・日本』への再スタート」をテーマに登壇。コロナ禍前までのインバウンドの状況や課題をあらためて整理した上で、インバウンド需要の回復に向けたこの間の取り組み、今後の注力点などについて話した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

 


会見リポート

インバウンド、数より消費額

堀 義男 (時事通信出身)

 海外から「鎖国」と批判された新型コロナウイルス感染拡大防止の厳しい水際対策が緩和されてほぼ2カ月が経過したタイミングでの会見。

 清野理事長は諸外国が入国規制緩和に向かって相次いでカジを切る中、「(日本でも規制緩和について)もっともっと議論すべきだと思っていた」と振り返り、日本が規制緩和に踏み切るのを待つ間、穏やかならぬ心中だったことをうかがわせた。

 スタートでの出遅れがインバウンド(訪日外国人旅行者)の国家間の獲得競争に影響を及ぼすとの懸念もにじませた。

 今後のインバウンド戦略で重視すると掲げたのが、「観光公害」を防ぎ、環境や社会文化、経済への影響を十分に配慮したサステナブル・ツーリズム。そして、アクティビティーと自然、文化体験のうち最低二つを含むアドベンチャートラベル、1回の旅行で一人100万円以上を国内で消費する富裕層による高付加価値旅行。最後に学会や国際機関の大会・国際会議、企業のセミナーや研修旅行などのMICE(マイス)。

 客数より国内旅行消費額に軸足を置いて、インバウンドの経済波及効果を一層追求する狙いが透ける。

 一方で、ある程度の価格で「安心、安全、清潔」な一定品質の製品・サービスを提供するのは「日本のいい文化」と指摘。これを評価して、東京から富士山経由、京都・大阪の「ゴールデンルート」を中心とする従来のボリュームゾーンも軽視しない考えも示した。

 ロシアのウクライナ侵攻は、ロシア上空ルートからの変更による飛行時間増加や、燃料価格の高騰に伴い国際線チケット代金に上乗せされる燃油サーチャージ引き上げなど、観光に及ぼす影響も小さくない。

 「ウクライナ戦争でアジアと欧州は遠くなっている。観光は平和でないとできない」と漏らした言葉は重い。


ゲスト / Guest

  • 清野智 / Satoshi SEINO

    日本政府観光局(JNTO)理事長

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:81

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