会見リポート
2021年04月02日
14:00 〜 15:30
10階ホール
著者と語る『ロッキード疑獄』ジャーナリスト 春名幹男氏
会見メモ
ジャーナリストの春名幹男氏が登壇し、日米の公文書や関係者への取材を基にした近著『ロッキード疑獄』について話した。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』(2020年10月、KADOKAWA)
会見リポート
元首相の「犯罪」陰謀説を検証
青島 顕 (毎日新聞社社会部)
米国の航空企業の航空機売り込みを巡り日本の政府高官に多額の賄賂がばらまかれたとされるロッキード事件には、40年以上たった今でも不明な点が残る。米国側が田中角栄元首相を有罪に追い込むことのできる証拠を日本の検察に提供したのはなぜか。田中元首相以上とされる「巨悪」の関与を示す資料はなぜ提供されなかったのか――である。これらについて、さまざまな「陰謀論」が流布されている。
元共同通信ワシントン支局長の春名氏は、解禁された米国の外交文書の収集・分析、日米のキーマンへのインタビューを通じて、約15年かけて約600㌻の大著で、なぞに迫った。
春名氏は主な五つの陰謀説のうち、四つを否定。残る「キッシンジャー元米国務長官の陰謀説」について、ほぼ正しいと結論づけた。日中国交正常化をはじめとする田中元首相の外交政策について、キッシンジャー氏が差別的な表現で嫌悪感を示していた文書を発見。それらを元に、日本の検察に田中元首相の名前が入った証拠文書を提供することについて、キッシンジャー氏が容認していたと考えたと説明した。
春名氏は著書について「できる限りのことは網羅した。この本をフォーラムのようにしたい」と話し、今回出した結論について議論を歓迎する考えを示した。
一方で「巨悪」の事件との関わりは解明できなかったという。米国には、情報機関の機密を時間がたっても公開しないルールがあり、封印されたままだとの見方だ。
半世紀近く前の事件を追い続ける動機について、春名氏は「過去の文書を探すのは、歴史研究と言うよりは今を知るためだ。トランプ前大統領とバイデン大統領の政治姿勢の違いを理解するためには、(年月を経て解禁された)過去の(機密)文書を調べることが重要だ」と話した。
ゲスト / Guest
-
春名幹男 / Mikio Haruna
ジャーナリスト / journalist
研究テーマ:著者と語る「ロッキード疑獄」