2021年02月03日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「2021年経済見通し」(7) 雇用と賃金への影響 山田久・日本総合研究所副理事長

会見メモ

雇用、労働経済を専門とする日本総合研究所副理事長の山田久氏がリモートで登壇し、新型コロナウイルスの感染拡大が雇用・賃金に与えた影響、雇用維持に向けた政策課題、経済再建に向けた雇用・賃金改革のあり方などについて話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

■「2021年経済見通し」

(1)1月13日(水)矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所研究理事 /チーフエコノミスト 

(2)1月15日(金)関根敏隆・一橋大学国際・公共政策大学院教授 

(3)1月18日(月)大槻奈那・マネックス証券執行役員 

(4)1月20日(水)小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹 

(5)1月25日(月)友田信男・東京商工リサーチ常務取締役情報本部長 

(6)1月29日(金)梶谷懐・神戸大学大学院教授 

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

コロナ禍を労働市場の構造転換のきっかけに

湯地 正裕 (朝日新聞社オピニオン編集部)

 日本総合研究所の山田久副理事長は、コロナ禍の経済的な影響について、当面は「9割5分経済」の状態が続くだろうと指摘した。10割の水準には回復せず、「雇用や賃金に調整圧力がかかり続ける」という。

 足元の雇用情勢では、予想ほど上昇していない失業率について、「統計に表れない状況が裏にある」と述べた。非正規社員や30~40代の女性らが職を失って就業者が減少する一方で、休業者や就業時間の短縮化が急増している現状を説いた。

 また、業種でも飲食や宿泊業など「特定分野にしわ寄せが起こり、立場の弱い人に集中している」と指摘。今後さらに失業率が上昇して、回復は来年半ば以降になると予想。雇用調整を抑えるために、賃金を削減する動きも広がっているとした。

 政策については、雇用調整助成金の特例措置の導入は早かったが、運用面の問題から、「厳しい時期にあまり効果を上げていない」と指摘。構造的に救えない人が多いうえ、中長期的にも「産業構造を固定化させる副作用がある」とした。「第2の雇用保険」を整備する必要性や、「弱者救済よりも敗者復活」を主眼とした北欧の実例を挙げ、就業支援や能力開発の重要性も訴えた。

 さらに、コロナ禍は「経済社会の構造を変えることにつながる」と中長期的な視点を提示。コロナ後は国際貿易の活発化が望めず、賃金上昇が前提となる「内需成長が問われる」とした。人手不足など業種間のばらつきが鮮明であり、企業・産業間の「シェアリング型一時就労」を進めることなどによって、労働市場で「日本型の失業なき流動化を図っていく必要がある」と述べた。

 今年の春闘は、「官製春闘」が終わって曲がり角を迎えており、雇用や賃金の上げ方を根底から議論し直すべきだと指摘。質疑応答では、賃上げの目安を示すような有識者による第3者的機関の設置案にも触れた。


ゲスト / Guest

  • 山田 久 / Hisashi Yamada

    日本 / Japan

    日本総合研究所副理事長

研究テーマ:2021年経済見通し

研究会回数:7

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