2020年03月25日 11:00 〜 12:00 10階ホール
ラフマーニ駐日イラン大使 会見

会見メモ

モルテザ・ラフマーニ・モヴァッヘド駐日イラン大使が、イランにおける新型コロナウイルス流行の現状や米国はじめ国際関係について話した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 稲見誉弘(イラン大使館)


会見リポート

コロナでも米との対立あらわ

平田 篤央 (朝日新聞社論説委員)

 パンデミック(世界的大流行)が加速している――世界保健機関(WHO)がそう警告する新型コロナウイルスの感染。イランは感染者が2万3049人と中東でずば抜けて多く、死者も1812人に上る(3月24日時点のWHOのまとめによる)。感染者数は中国、イタリア、米国、スペイン、ドイツに次ぎ、死者の数も世界で4番目だ。その駐日大使の会見とあって、質疑もこの問題に集中した。

 とはいえ、話は保健衛生の枠内に収まらない。ラフマーニ大使は冒頭から、米トランプ政権の政策を「医療テロリズムだ」とやり玉に挙げた。核開発を大幅に制限する見返りにイランが経済的な実利を得られるはずだった核合意。トランプ政権は2年前に一方的に離脱し、イランに「最大限の」経済制裁を科している。このため、医療機器や医薬品の入手が困難で、感染症対策にも支障を来している、というわけだ。

 人道物資は制裁の対象外のはずだ。だが大使は、イランの歳入の柱である原油輸出ができないため資金不足のうえ、米国の制裁が第三国も対象としているため、各国の企業がイランとの商取引に二の足を踏んでいると説明。イラン国民の健康と福祉を守れないと憤った。

 イランでは2月、国会議員選挙があったばかり。最初の感染者が公表されたのは投票日の2日前だったため、投票率を下げないために情報を隠し、初期対応が遅れたのではないか、との批判もある。これについて大使は「イランの体制に反対する国家や組織による言い掛かりだ」と一蹴した。

 大使は、日本政府がイランに対する25億円規模の医療支援を決めたと明らかにし、謝意を述べた。ただ、日本が国際機関を通しているのに対し、中国は医療機器や医薬品の提供、専門家の派遣など直接支援を行っているという。米国、イラン双方と緊密な関係を持つ日本の難しい立場がここにもにじみ出ているようだ。


ゲスト / Guest

  • モルテザ・ラフマーニ・モヴァッヘド / Morteza Rahmani Movahed

    イラン / Iran

    駐日イラン大使 / Ambassador of the Islamic Republic of Iran

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