2020年03月25日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「新型コロナウイルス」(5) 末松誠・日本医療研究開発機構理事長

会見メモ

日本医療研究開発機構(AMED)の末松誠理事長が、新型コロナウイルスに関する研究開発の取り組みになどついて話した。

司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員


会見リポート

「すべての研究者の結束を」

小川 明 (共同通信社客員論説委員)

 研究費配分機関の日本医療研究開発機構(AMED)は2015年に研究成果の医療への円滑な実用化を目指し政治主導で発足した。慶應義塾大医学部長だった末松誠氏は初代理事長としてAMEDを5年率いてきた。緊急課題の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への取り組みを話した。

 「昨年12月から科学のオートノミー(自律性)の危機のさなかに新型コロナが中国で現れ、1月中旬に調整費振り替えなどで約30憶円を新型コロナの研究開発に回し、早くスタートできた」と語った。1月29日には国際的なデータ共有協定を締結し、新型コロナ研究論文には科学雑誌に投稿した時点で査読の前に公開するようにした。新型コロナの患者に投与が試みられている既存薬の検証も報告して「ワクチン開発には短く見積もっても1年ちょっとはかかるが、あきらめずに複数のパイプラインを動かしていく」「誰もが経験したことがない感染症では専門外も含めてたくさんの人が研究してほしい」と訴えた。

 感染爆発の重大局面で「人口の多い都市の高齢者の慢性期病院が医療崩壊を起こさないように医療スタッフへの十分な支援を」求めた。検査については「現在のPCR法には限界があり、抗体でしっかり調べていくのが非常に重要だ」と指摘した。ビッグデータの関連で「日本は国民皆保険で臨床データが集計しやすい。流行時にどう変わったかを比較できるのは日本だけだ」とデータ解析の意義に言及した。

 今ある危機に「すべての科学者、研究者を結集しないといけない。複数の学会の協力で化学反応を起こさせるのはAMEDの使命だ。結束してやれることはたくさんある」と強調した。天文学と映画に造詣が深く、揮ごうではスターウォーズの決まり文句「May the force be with us!」(微力の守りあれ)を書き、「今はそういう気持ちです」と話した。

 末松氏は任期満了で3月末に退任した。


ゲスト / Guest

  • 末松誠 / Makoto Suematsu

    日本 / Japan

    日本医療研究開発機構(AMED)理事長 / President, Japan Agency for Medical Research and Development (AMED)

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:5

ページのTOPへ