2019年11月13日 10:30 〜 12:00 10階ホール
「子どもを虐待から守るには」鈴木秀洋・日本大学危機管理学部准教授

会見メモ

文京区子ども家庭支援センター所長などとして児童福祉の現場に携わってきた鈴木秀洋氏が、野田市と札幌市の虐待死亡事件で検証委員を務めている経験ももとに、法制度設計の課題などについて話した。

 

司会 磯崎由美 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

「児童虐待対応、現状批判の『その先』の議論必要」

南 優子 (日本経済新聞社生活情報部次長)

 幼い子供が親から受けた虐待で命を落とす事件が後を絶たない。東京都文京区で児童福祉の現場に携わった鈴木氏はまず、「報道で注目されるのは児童相談所だが、子供には様々な機関が関わっている」と指摘、「現状の児童相談体制の全体の枠組みを考える必要がある」と強調した。

 児童福祉法の平成28年(2016年)改正で市区町村の役割が大きく変わった。児相は支援よりも、リスクが高い案件の保護・介入といった親対応・子対応の一部を重点的に担う機関となった。児相が支援から保護・介入まで幅広く担った時代に現役だった「識者」に記事へのコメントを求めるのは果たして妥当なのか、との問題提起もあった。

 子供の命を守る枠組みの柱として、「要保護児童対策地域協議会(要対協)」がある。自治体の子育て支援拠点や保健機関、学校や地域の警察、医療機関、児相、民間団体などが連携し、情報を出し合って対応する機関だ。鈴木氏は「地域のネットワークを使う画期的なしくみ」と評価した。関係機関が様々な接点で得た虐待に関する情報を組み合わせて、全体像を把握できる意義がある。

 一方で「法律上、要対協の『司令塔』は市区町村の調整機関となっているが、あまり果たされていない」という。要対協に限らず、背景が異なる専門家や機関が虐待事案に関わると、判断や対応の偏りを避けられる半面、「背中合わせで仕事しながら、得た情報を交換していない」など連携が進まない現状がある。鈴木氏は「連携や役割分担、マニュアルの必要性などの『その先』の具体的な提言を報じてほしい」と訴えた。

 虐待とは「特別な親がしているというわけではない」。だからこそ子供の命を親ごと守る視点が欠かせない。保護者が孤立せず、勇気を出して相談しようと思える社会づくりに、報道が果たせることはまだまだある。


ゲスト / Guest

  • 鈴木秀洋 / Hidehiro Suzuki

    日本 / Japan

    日本大学危機管理学部准教授 / Associate Professor, College of Risk Management, Nihon University

研究テーマ:子どもを虐待から守るには

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