2018年12月07日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「朝鮮半島の今を知る」(19) 小針進・静岡県立大学教授

会見メモ

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

危うさ増す日韓の「眺め」

塚本 壮一 (NHK解説委員室解説委員)

 日韓のあいだに寒々とした光景が広がっている。韓国の最高裁が徴用工訴訟で日本企業に賠償を求める確定判決を出し、韓国政府は日本が10億円を拠出した慰安婦支援のための財団の解散を一方的に決めた。日中関係が改善し、ロシアと北方領土交渉が始まろうとしているいま、日韓の冷え込みだけが際立つ。

 日韓の主に社会・文化面の動きを長く研究してきた小針進教授は、両国民が互いをどのように見ているかについて、「眺め」という独特の言葉を使って解き明かした。相手に対する単なる見方やその時々の顕在的な現象だけでなく、心の奥に潜む心理的な要素なども考察の対象だ。

 韓国人は、「韓日関係は法だけで解決できない道徳的、歴史的背景がある」(韓国外務省当局者)と考えていると小針さんは話す。道徳が重要だというのなら、韓国は日本と政治・外交的に連携を持つことへの関心を加速度的に失っていくのではないかと先が思いやられる。

 「韓国はゴール・ポストを動かす」という日本の不満について、小針さんは、「当然のことであり、韓国側はそう見られていることに気づいていない」と問題点を指摘した。同時に、韓国人が日本人の「遵法精神」や「配慮の文化」を評価し、「魅力的に感じる市民」としてドイツに次ぐ2位に挙げていることを取り上げ、相手の「潜在的な眺め」を知る重要性にも触れた。

 さらに、日韓の今後に向け、青少年の交流プログラムの充実を求めた。実は小針さんは、日本記者クラブで講演をしたその日、韓国人学生との交流合宿に参加した日本の大学生との座談会に出席している。実践の人でもあるのだ。

 互いに対する「眺め」を少しでも広げるにはどうすればいいのか。答えは簡単ではないが、その問いを意識することが両国民に求められていると感じた。

 


ゲスト / Guest

  • 小針進 / Susumu Kohari

    日本 / Japan

    静岡県立大学教授 / professor, University of Shizuoka

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:19

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