2018年11月30日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「日本の労働を誰が支えるのか」(2) 毛受敏浩・日本国際交流センター執行理事

会見メモ

長く外国人労働者・定住者受け入れ問題に関わってきた毛受敏浩氏が、外国人労働者受入の現状と入管法改正案について話した。

改正案が提出されたことについては「移民の話は長くタブーだった。重たい蓋が開き、議論をはじめる引き金となったことは評価したい」。また技能実習制度と併存することの矛盾を指摘し「技能実習制度は廃止もしくは大幅縮小を」とした。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

移民政策の早期実施を

竹田 忠 (企画委員 NHK解説委員)

 臨時国会で最大の与野党対決法案となった入管法改正案。議論が深まらないまま、政府与党は会期内成立に向けて突き進む。日本で働く外国人を大幅に増やすという政策の大転換。国の形、社会のありかたはどう変わるのか? 幅広い視点で考えるシリーズの第2回。

 氏は以前から、移民政策の重要性を指摘。たとえばこの10年あまりで全国約7千の公立学校が廃校し、バスの廃止路線は毎年2千キロに及ぶなど、人口減少がもたらす衝撃的な数字をあげて、地域や社会の存続には移民が不可欠だと説明。すでに130万人近い外国人労働者が働いており、政府が早く移民政策を打ち出さなければ、差別や対立などの移民問題が起きるおそれがあると警鐘を鳴らす。

 改正法案については、これまで日本が原則として受け入れてこなかった単純労働者に門戸を開くもので、一歩前進と氏は評価。しかし同時に課題を指摘。一つは技能実習制度が残されること。本来は海外への技術移転が目的の制度だが、実態は農業や建設など、日本人がやりたがらないきつい低賃金の仕事の受け皿になっている。転職の自由がないため賃金不払いや違法残業、虐待など、様々な人権侵害が起きており、去年だけで7千人が失踪。国際的な批判も強い。新たな制度を作って単純労働を受け入れる以上、技能実習は一定の年限内に廃止するか、大幅に縮小すべきだと提言。

 また法務省が今回の改正に伴って、入国管理局を格上げして、新たに入国在留管理庁を設ける案については、必要なのは雇用環境や生活、教育などの総合的な外国人政策を担う組織であり、単なる在留管理では不十分と釘を刺す。

 少しでもいい人材に来てもらうためには「外国人を歓迎します」という政府の明確なメッセージが必要だと氏は言うが、政府の目先の「人手不足対策」とあるべき「共生社会」との間の溝は深そうだ。


ゲスト / Guest

  • 毛受敏浩 / Toshihiro Menju

    日本 / Japan

    日本国際交流センター執行理事 / Managing Director and Chief Program Officer, JCIE

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:2

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