2018年12月10日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「日本の労働を誰が支えるのか」(3) 指宿昭一・弁護士

会見メモ

 

低賃金、長時間労働などに苦しむ外国人労働者の救済に携わってきた指宿昭一弁護士が、外国人労働者の現状と改正入管法について話した。

 

 

暁法律事務所

外国人技能実習生問題弁護士連絡会(指宿氏が共同代表を務める) 

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

技能実習制度は廃止すべき

松浦 茂長 (フジテレビ出身)

 指宿氏は外国人技能実習生の問題に絞って語ったが、長年彼らの救済のために働いてきた弁護士の言葉だけに胸に突き刺さる鋭さがあった。

 実習生は送り出し機関に100万円もの金を払って渡ってくるので借金で首が回らない。恋愛禁止、日本人と話してはいけない、別の職場に移ることはできないなど人権侵害的ルールを押しつけられ、残業時給が300円といった違法の待遇でも、借金と強制帰国のリスクに縛られて『ものが言えない労働者』―これが実習生の実態だという。身売りされた遊女の苦境を連想してしまった。

 雇う側にとってこれほどありがたい制度はないだろう。過疎の離島にも縛り付けておける。5年後には帰国するので、家族や年金の配慮もいらない。しかも、定住リスクのない安価な使い捨て労働力確保の仕組みに『技術移転を通じた国際貢献』という美しい看板まで付けた。指宿氏は「法務省も受け入れ機関もこれが真っ赤な嘘だと知っています。知りながら『カラスは白い』と言い張ってきた」と糾弾したが、確かに悪魔的狡知ではある。

 では改正入管法によって『カラスはやっぱり黒い』に改まるのか? 指宿氏は「新制度にも技術実習制度が温存されるし、何よりも送り出し国のブローカー対策が徹底的に欠けている」と指摘した。ダークな部分を温存させたい圧力は強いのだろう。

 フランス人の友人に「日本は人手不足だから外国人に大勢来てもらうことにするらしい。どう思う?」と聞くと、皆「絶対やめろ」と言う。外国好きな左翼の友人もだ。移民排斥を唱えて躍進する極右・ポピュリストが気がかりなのだろう。ヨーロッパのような移民問題による政治危機を招かないためにも、指宿氏のモットー「我々は労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった」(スイスの作家マックス・フリッシュ)を噛みしめる必要がありそうだ。

 


ゲスト / Guest

  • 指宿昭一 / Shoichi Ibusuki

    弁護士 / attorney at law

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:3

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