2018年12月04日 14:00 〜 15:00 9階会見場
「平成とは何だったのか」(14) バブルの崩壊と再生 斉藤惇・元日本取引所グループCEO

会見メモ

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

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会見詳録


会見リポート

米の圧力で豊かさを失った30年

櫻井 玲子 (NHK解説委員)

 「今の米中貿易摩擦はかつて日本が置かれた状況とそっくりだ」と語り出した斉藤惇さん。野村證券、産業再生機構、それに日本取引所グループといった金融の第一線に身を置きながら昭和から平成を駆け抜けてきた斉藤さんの眼には、直近の30年は、日本がアメリカの圧力を受け、なすすべもないまま、豊かさを失っていった時代だと映る。

 ウォール街のビジネスマンからも恐れられ、ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツの工場をもいち早く買収するほどの勢いを一時期は誇っていたジャパンマネー。しかし世界一の座を絶対に譲りたくないアメリカとの間で日米構造協議や半導体交渉を迫られる中、巨額の内需喚起策を打ち出すことを余儀なくされ、日本におけるバブルの誕生と崩壊を招いた。

 その結果、官民ともに、不良債権処理という目の前の課題に追われ、半導体など世界をリードしていたはずの産業も衰退し、国の将来の基盤づくりができなかったと斉藤さんは悔しがる。

 トランプ大統領が唱える「アメリカファースト」も今に始まったことではないと指摘。中国が過去の日米協議からどんな教訓を学び取りアメリカと向きあっていくのかを注視する考えを示した。

 また産業再生機構のトップとして不良債権処理問題にあたった経験から、官と民との距離感についても言及。国のおカネで民を救うこと自体にはあまり問題を感じないが、その担い手には相応の高潔さと知恵が求められると注文をつけた。最終的には利益を出し、予定より1年前倒しで機構を解散した斉藤さんの矜持を感じた。

 今後の課題については、日本は人口減少と人材教育という2つの最重要課題を克服するのに失敗したと総括。失敗は失敗として認め、セカンドベストの選択肢として海外の優秀な人材を経営者として活用し国境を越えたM&Aを行うことで日本の国際競争力を維持することを提言した。

 


ゲスト / Guest

  • 斉藤惇 / Atsushi Saito

    日本 / Japan

    元日本取引所グループCEO / former CEO, Japan Exchange Group

研究テーマ:平成とは何だったのか

研究会回数:14

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