会見リポート
2018年05月11日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「公文書管理を考える」(2) 仲本和彦・沖縄県公文書館・アーキビスト
会見メモ
米国立公文書館(NARA)でアーキビストの訓練を受けた後、9年間にわたり資料調査を行った経験などから「デモクラシーを支える記録管理」と題し、米国の公文書管理制度について解説した。
日本の制度への提言として①公文書の定義を「組織共用」に限定しない ②公文書館の権限を強化する--独立機関にする ③公文書館と省庁の義務を明確にする--レコード・スケジュールの導入 ④罰則規定を設ける の4点をあげた。
司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)
会見リポート
独立した管理機関設置など提言
上地 一姫 (沖縄タイムス東京支社)
森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽など公文書管理を巡る問題が相次いで発覚している。1997年から9年間、米国立公文書館(NARA)で資料調査を行い、沖縄県公文書館でアーキビストとして活躍する仲本和彦さんが、日本の公文書管理制度へ改善策を提言した。
仲本さんの案は①公文書の定義を「組織の共有」に限定しない、②独立した記録管理院を創設、③レコードマネジャーの配置、④罰則規定を設ける―の4点だ。
日本の公文書管理法では行政ファイルの破棄に関し首相に「協議し同意を得なければならない」とされ査察も首相が「提出を求めることができる」にとどまっている。しかし、米国では政府から独立した国立公文書館長が査察し、破棄も処分計画書を点検し、利害関係者がコメントできるよう官報に告知した後になされると違いを解説。政府の意向で破棄がされないよう、会計検査院のように独立した組織の設置などを求め「抜本的改革をしていかないとこの問題はなくならない」と指摘した。
米国では国家戦略として記録管理が取り組まれているという。特に課題となっているのが電子媒体の保存で100年先にも閲覧できるようにするため産官学で取り組んでいると紹介した。トランプ大統領が駆使するツイッターも公文書として保存されるという。
仲本さんは制度不備だけでなく、現在の国会論争にも苦言を呈した。首相の関与など「安倍おろし」に終始している点を疑問視し「本質は行政がゆがめられる土壌があることだ。公文書記録の管理をどうするかもっと突っ込んだ議論をしてほしい」と訴えた。今を生きる国民への説明責任だけでなく、将来の国民が政策点検するのに重要な公文書。新国立公文書館の建設までに、公文書の役割を国民が考える機会にしたい。
ゲスト / Guest
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仲本和彦 / Kazuhiko Nakamoto
沖縄県公文書館・アーキビスト / Supervisory Archivist, Okinawa Prefectural Archives
研究テーマ:公文書管理を考える
研究会回数:2