2025年10月20日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「トランプ2.0」(13) 赤阪清隆・元国連広報担当事務次長

会見メモ

安保理の機能不全が続く一方で、米政府が拠出を大幅に減らすなど、国連を取り巻く環境は厳しさを増す。10月24日で創設80年を迎えるのを前に、元国連事務次長でニッポンドットコム理事長の赤阪清隆さんが「80周年を迎える国連の課題とこれから」と題し登壇。組織運営や安保理改革をめぐる課題、トランプ政権の動きなどを解説するとともに、国連の機能強化に向けた日本の役割や期待することなどについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)


会見リポート

加盟国が国連をどう使うか

鈴木 美勝 (専門誌「外交」前編集長 )

 国際連合が創設されて80年。元国連事務次長・赤阪氏の会見は、第2代事務総長ハマーショルドの名言から始まった。「国連は人類を天国に導くために創設されたのではなくて、地獄に落ちるのを救うために創られた」。この言葉は、国連とは単に理想主義に根差すものではなく、世界がより悲惨な状況に陥るのを防ぐ、それこそが現実的な使命である―という国連の本質を寸分違わず突いたものだ。

 21世紀に入って国連は、SDGs(持続可能な開発目標)の採択や核兵器禁止条約の発効など、人類が忘れてはならぬ目標や理想を掲げた。が、現に直面している課題はと言えば、とてつもなく重く、深刻だ。気候変動、人種差別・偏見問題、何よりもウクライナはじめ、各地に広がる戦争・紛争―ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのガザ攻撃―等々、そして、中国・ウイグル人、ミャンマー・ロヒンギャなどへの弾圧は、ジェノサイドが疑われている。国連には憲章に基づき介入する責任があるのだが、存在感は薄い。

 危機に立ちすくむ国連。司会の大内企画委員は、国連が「ピンチの中で迎えた80歳のバースデー」と評した。質疑応答では、「国連自体が時代遅れ。新しい組織を立ち上げてはどうかとの声もある」と、いささか乱暴な改革論も飛び出した。が、赤阪氏は現実的ではないとやんわり反論。要は、ミニラテラル外交にはない国連本来の強み「正当性と普遍性」を生かして、加盟国が国連をどう使うかがポイントだと強調した。

 外務省が「国連中心主義」を日本外交3原則の一つとして初の「外交青書」に明記したのが、1957年9月。それは、その後の時代変遷の中で事実上消滅。今や「日米基軸」だけが金看板として残った感がある。今後、日本外交がイニシアチブを発揮し、忘れ去られた筆頭原則「国連中心主義」を時代に合わせた形で再生できるのか。


ゲスト / Guest

  • 赤阪清隆 / Kiyotaka AKASAKA

    元国連広報担当事務次長

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:13

ページのTOPへ