2025年10月03日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「ハマス・イスラエル衝突」(10) 錦田愛子・慶應義塾大学教授

会見メモ

パレスチナのガザ地区でイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が勃発してから7日で2年を迎える。9月末には、トランプ米大統領が20項目から成るガザ和平案を発表、イスラエルのネタニヤフ首相も計画への支持を表明し、今後のハマスの対応が焦点となる中で、慶應義塾大学の錦田愛子教授が登壇した。

2年にわたる戦争がガザ、イスラエル、中東地域にもたらした変化を解説するとともに、和平案をハマスが受け入れる可能性はあるのか、戦争の終結に向けた道筋、戦後のガザを誰が統治するのか、今後注視すべきポイントなどについて話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

※会見資料5ページの「パレスチナの世論の変化」に誤りがございました(会見動画15:47~)。

正しくはこちらをご参照ください。

https://www.jnpc.or.jp/files/2025/10/866d983d-ebb0-4a06-9298-28fdaa44addb.pdf


会見リポート

ガザ戦闘2年 停戦実現は

竹澤 顕 (NHK出身)

 錦田氏は、この「ハマス・イスラエル衝突」会見シリーズの1回目にも登壇いただいた。「当初は、これまでの衝突と同様、短期間で終わると考えていた」と2年前を振り返った。「ただ実際には、研究者の予想をはるかに超えてしまった」

 錦田氏は、イスラエルはじめ豊富な現地調査を踏まえ、ガザをめぐる動向を多角的に分析・解説した。

 ガザは徹底的に破壊された。死者は6万6000人を超えた。ガザ市内の食料事情は最も深刻な「飢饉」に陥った。戦端を開いたハマスに対し懐疑的な世論が増え続けている。

 イランを中心とする「抵抗の枢軸」。アサド政権が崩壊したシリア。中東地域も、イスラエルの軍事力を前に従来の秩序が揺らいでいる。

 国際社会は分断が一段と進んだ。国連は機能不全に陥ったままだ。錦田氏は、「イスラエルに国際的な圧力が効かない状況になってしまっている」と指摘した。

 いま注目されるのは、トランプ大統領が9月末に提示した包括的な和平案だ。停戦や人質の解放、ハマスの武装解除やイスラエル軍の完全撤退などが含まれる。実行するかどうかはともかく、パレスチナ国家の承認にまで言及している。

 錦田氏は、「和平案はあいまいな文言が多く、具体的な執行の道筋が示されていない」と指摘しつつも、戦闘の終わりは見えてきたかとの問いに、「正念場だ」と期待を示した。

 情勢は日々大きく動いている。

 この会見の翌朝、ハマスは「人質全員解放に同意する」と発表した。双方の協議がこれから始まるとしても、「あいまいな」和平案をどう具体化していくのか、難航は必至だ。

 錦田氏は、当クラブのゲストブックに「人道」という言葉を残した。2年に及ぶ戦闘を終結し、ガザの人々が直面している危機的な人道状況を改善することができるか。この言葉の重みは、日に日に増している。


ゲスト / Guest

  • 錦田愛子 / Aiko NISHIKIDA

    慶応義塾大学教授 / professor, Keio University

研究テーマ:ハマス・イスラエル衝突

研究会回数:10

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