会見リポート
2025年10月17日
13:00 〜 14:30
10階ホール
著者と語る『タブーを破った外交官 田中均回顧録』 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問
会見メモ
本書は外務省北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官などを歴任し、日朝平壌宣言や日米安保「再定義」、韓国との歴史問題など、冷戦終結後に日本が直面してきた外交課題に外交官として向き合ってきた田中均さんのオーラルヒストリー。10月7日に岩波書店から刊行された。
米国、政治、世論という3つのタブーを軸に、日本外交の課題やあるべき外交の姿について話すとともに、次の政権に求められる対外政策の在り方にも触れた。
司会 内田恭司 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
挑んだ三つの外交タブー
森 保裕 (共同通信社論説委員)
「日本がアメリカに対して自分の意見を言うためにはアジアとの関係を太くすることだ」。田中均氏は外務省で東アジア共同体構想を推進した経験を回顧しながら「米国と対等な関係を築くにはテコが必要」との持論を語った。
高市新政権については、首相自身が「非常な右派」で日本維新の会の後押しを受け「一番の懸念は中国や韓国との関係だ」と指摘した。
豊富な外交経験に基づく、歯に衣着せぬリベラルな発言で知られる。
米国、政治、世論…。田中氏は日本外交の三つのタブーを論じた。「日米関係を外交の基軸とし、米国の存在を疑うこと自体がタブーだった」。だが、田中氏は米国のタブーに挑戦した。
日米経済摩擦では米国の圧力を使って日本の市場開放を図り、小泉純一郎首相訪朝を前に警戒する米国への根回しを行った。
二つ目のタブー「政治」とは、首相ら政治家の外交官への圧力を指す。「政治家は民意に基づいて、プロフェッショナルな観点から考えられた官僚の政策をたたく」「自民党内閣は官僚人事で首根っこをつかまえ、言うことを聞かせようとした」
小泉首相が靖国神社参拝を繰り返した時、「行くなとは言わなかったが、行くとどうなるかについては外交のプロとしてきちんと伝えた」。田中氏は「官僚が創造的なプランを持ってくる余地を残さなければいけない」と訴えた。
第三に「世論」。北朝鮮から拉致被害者が帰国後、田中氏は日朝国交正常化を優先して拉致問題を軽視したなどと右派ポピュリストらから激しい批判を受けた。
「何も間違ったことはしていない」が、世論対策の不足は「とても反省している」。
田中氏は「世論づくりをしたい」と退官後20年間、ユーチューブやX(旧ツイッター)で積極的にオピニオンを発信し続けている。
ゲスト / Guest
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田中均 / Hitoshi TANAKA
日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問
研究テーマ:タブーを破った外交官 田中均回顧録
