会見リポート
2025年10月14日
15:00 〜 16:30
9階会見場
「生成AI」(7) 生成AIと著作権 弁護士 福井健策さん
会見メモ
コンテンツや書籍、アニメーションなどめぐり、著作権者が生成AI企業を提訴するケースが国内外で相次いでいる。エンターテインメント、メディアの法律と契約、著作権法などを専門とする弁護士の福井健策さんが、「生成AIと著作権 コンテンツと社会のゆくえ」をテーマに登壇。
生成AIと著作権に関する基本的な考え方、アメリカをはじめ世界で頻発する訴訟の現状、コンテンツ産業は生成AIとどう付き合うべきなのかなどについて話した。
司会 行方史郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)
会見リポート
技術と契約でルール補完を
木瀬 武 (読売新聞社経済部)
会見で流れた一本の動画には、日本の人気アニメのキャラクターがこれでもかと登場した。
進撃の巨人、NARUTO、鬼滅の刃、千と千尋の神隠し――。数え上げればきりがない。米オープンAIが9月に公開した動画生成AI(人工知能)「ソラ」は、日本のアニメのキャラクターが使い放題になっているとして批判を浴びた。
面を食らったのは福井さんも同じようだ。「アイデアの類似ではなく表現の類似であり、著作権侵害の可能性が相当高い。オープンAIは恐れ知らずになっている」と述べた。
著作権の世界では、作風やアイデアが似ているだけならセーフというのが、確立された考え方だという。これに照らすと、AIを使って自分の写真を「ジブリ風」に加工してSNSに投稿するのは、侵害にあたらない。この一線を堂々と越えてきたのが、今回のソラだった。
生成AIを巡って世界中で訴訟が相次いでいる。コンテンツの違法性が問われたり、インターネット上の文章や画像をAIに学習させる行為が焦点になったりしている。米国では、一定の条件下で著作権の適用除外となる「フェアユース(公正利用)」の是非が争点になっている。
福井さんが懸念を示したのが、「逃げ切り戦略」と呼ぶ米企業の動きだ。裁判が続く間に企業は事業を拡大して利益を稼ぎ、白黒つく頃には市場で圧倒的な地位を築いてしまう。違法動画の温床となったかつてのユーチューブがそうだったようで、「今の裁判のスピードでは(抑止)効果は限定的だ」と話す。
ルール作りには時間がかかる。ならば当面は「技術と契約でルールを補完する」というのが、福井さんの結論だ。AIの無断学習を抑止する技術や収益の分配などが想定される。身勝手な利用に「ノー」を突きつけつつ、共存していくための知恵が求められるという。
ゲスト / Guest
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福井健策 / Kensaku FUKUI
弁護士
研究テーマ:生成AI
研究会回数:7
