2018年03月12日 14:30 〜 16:30 10階ホール
青井未帆・学習院大学教授/井上武史・九州大学准教授「第九条」:シリーズ研究会「憲法論議の視点」(3)

会見メモ

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 

写真左から=井上武史氏、青井未帆氏

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

相反する意見を参考に

竹田 昌弘 (共同通信社編集委員兼論説委員)

 シリーズ研究会「憲法論議の視点」の3回目は、現下の最大テーマともいえる「第9条」を巡り、ともに憲法学者で主張が異なる青井未帆学習院大教授と、井上武史九州大准教授が論じ合った。白熱した議論となり、会場からの質問も相次いだ。

 まず井上氏が9条について「条文と意味が乖離し、統治者の行為を統制できない。立憲主義の面で問題ではないか」「国際貢献の足かせになっていないか。それは憲法の国際協調主義に反しないか」「武力行使の範囲を憲法で固定するのは合理的か。法律で対応する国は多い」と課題を次々に挙げ、改憲に理解を示す。

 その上で、自衛隊を合憲にするという安倍政権の政策目標を達成するには、戦力保持を禁じる9条2項は維持しつつ、その後に「前項の規定は、自衛のための必要最小限度の実力の保持を妨げない」との条項を加えればいいと提案した。

 一方、青井氏は「9条は日米安保条約などと無関係ではいられず、9条とその解釈、諸政策、憲法文化で構成する『9条プロジェクト』という広い視点で捉えるべきだ」とし、集団的自衛権行使の否定や専守防衛、攻撃型兵器不保持、行政機関という自衛隊の位置付けにより「平和国家を担保してきた」と主張する。

 また軍隊を率いる「統帥」に注目。憲法に関わらず存在するもので「明治憲法下は天皇大権となって敗戦し、現憲法下では潜った形だった。自衛隊を明記する改憲で再び統帥と向き合うことになるが、今の政治の力量では大いに不安」と指摘した。

 質疑では「国民の信任を得ている自衛隊」と違憲論との関係、集団的自衛権の捉え方などが問われた。その応答も含め、2人の相反する意見は、自民党の改憲条文案を受けた今後の論議で大いに参考になる。


ゲスト / Guest

  • 青井未帆 / Miho Aoi

    学習院大学教授 / Prefessor, Gakushuin University

  • 井上武史 / Takeshi Inoue

    九州大学准教授 / Associate Professor, Kyushu University

研究テーマ:憲法論議の視点

研究会回数:3

ページのTOPへ